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サイド・ストリートのチェックメイトのレビュー・感想・評価

サイド・ストリート(1950年製作の映画)
3.8
奇想天外映画祭2022の一作。他の奇想天外作品に比べると奇想天外度は低い。犯罪ノワール定番ものという感じ。

「夜の人々」と同じファーリー・グレンジャー、キャシー・オドネルのコンビ共演ということで見た。
夜の人々のニコラス・レイ監督も名匠だが本作品の監督アンソニー・マンもまた名匠。見せるところは違えど監督のカラーが楽しめる。

画質は良くはない。それをとやかく言う人もいるが50年代素材は、もちろん程度の良いものもあれば悪い物もある。
今年(2022年)のシネマヴェーラ渋谷主催のジョン・フォード監督特集を大体見てもわかるが白黒映画は元々素材が悪いものはあるし、デジタル化で修復が入れられてないものもある。白黒映画は所詮そういうものである。シネマヴェーラのように作品ごとに画質悪いことをご承知おきとのアナウンスがあれば良いのだが、ある視点(奇想天外という)で選定された映画を画質が悪いというだけで上映する側の落ち度や非常識と断ずるのは酷である。4K映像時代とはいえ映画館がみな4Kプロジェクターであるわけもなく(大手シネコン以外で4K上映できる映画館は極端に少ないし)、また過去作品をBD化した作品とて4Kどころか2Kで修復するのも容易ではないなどと思うのだがどうだろうか。

本編自体に話しを戻すと、傑作ノワールとして名高い夜の人々と同じコンビなのでつい比較してしまうが、社会環境やワル仲間のとばっちり受けた二人の逃避行という社会構造的人生破滅話の前作と比べると、貧しくとも生業を持つ身ながら無計画な出来心で魔が差した1人追われる立場の追跡劇とテーマは浅い。だが追跡という表面的だがそのプロセスを描くことで背景の社会を垣間見える面白さがある。
ヤクザと悪徳弁護士達の絡み、都会の下町ならありそうな警察に情報提供するコミカルな小僧、警察の動き、カネを預けるバーの情景、高層ビルの俯瞰によるカーチェイスなど当時のおそらくロケによる実際の町の情景が興味深かった。
製作年が1950年といえば昭和25年だ。すでに摩天楼と林立するビル群。これらができたばかりでなく町としてなじんで存在していることが描かれている。
アメリカの国力のすごさ。
こんな国に戦争仕掛けた日本はつくづくバカだと思ったりもする。関係ないけど。

日曜日の朝という無人状態の設定ではあるが、今と違って人ごみでの派手なカーチェイスはできなかったんだろう。けれどもビルの谷間を縦横無尽に走りまくる面白さは当時の人はワクワクしたに違いない。

ファーリーグレンジャーのオドオドしながらの切羽詰まった焦りの演技はうまくまるで地でいっているかのような雰囲気に見入ってしまった。まぁオドネルはあまり見せ場なかったけど。
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