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ローラのbennoのレビュー・感想・評価

ローラ(1981年製作の映画)
4.3
ファスビンダー監督作品8作品目…。

『西ドイツ3部作』のひとつ…(他…『マリア・ブラウンの結婚』『ヴェロニカ・フォスのあこがれ』)…。

今作はジョセフ・フォン・スタンバーグ監督『嘆きの天使』をモチーフとしていますが…寧ろファスビンダーらしい新たな物語として新構築…。

ひとたびファスビンダーの手に掛かるとローラ(バラバラ・スゴヴァ)もこの上ない最高のビッチに…!!


1950年代…西ドイツ、バイエルン州の小さな村…ここでは地元の建設業者シュッカートが幅を利かせ、不正な利権を享受…彼の情婦であるローラも娼館で踊り子をしながら奔放な生活を送っていました…。

ある日、この町に清廉潔白な建設局の役人フォン・ボーンが新局長として赴任することとなります…。

ローラはシュッカートの情婦という立場に飽きたらず、自らを偽りマリア・ルイーズという名で淑女を演じフォン・ボーンに近づきます…そしてまんまと彼は彼女の虜に…。

しかしある夜…フォン・ボーンはローラの本当の姿を知ることに…。



今作はファスビンダーの映像の中でも、特に色彩に拘りが見えピンク、ブルー、グリーン、イエローのトーンが鮮やか…ローラを映し出す時はピンクトーン、フォン・ボーンはブルートーン…ファスビンダーならではの美意識を魅せつけます…。

また、娼婦ローラは黒のドレス、淑女マリアは白のドレスと視覚操作も巧妙…。



  〜〜〜⚠︎以下ネタバレ含みます⚠︎〜〜〜









自らを「汚れている」と言うローラ…本心では道徳的な誠実さに憧れていたのか…しかしフォン・ボーンに娼婦であることを知られてしまった直後…彼女の態度は一変、自暴自棄になったかのように感情を剥き出しに歌い踊り狂います…。

しかしそんな思いも他所に…彼女はやっぱり「汚れて」いました…。

フォン・ボーンは当初血気盛んに正義を振り翳し、シュッカートの不正を暴こうと意気込んでいたのですが…周りの人間たちはそれを望んでおらず…資本という悪魔の囁きによって、遂には市場経済の論理に則り自らがお金でローラを買うことになるのです…。 

彼もまた、退廃のうちに飲み込まれ…ミイラ取りがミイラになるのでした…。

その後、ローラはフォン・ボーンとの結婚により名声…シュッカートの情婦として娼館という資本…その両方を手に入れるのです…恐るべし!! ビッチ!!

戦後、急速な経済成長を遂げた裏で…心の復興は不道徳に自らの資産に向いていきます…

その目的の為なら"愛"は容易な手段…。

哀切を極めたフォン・ボーンのラストの台詞…。

皮肉に満ちた監督の悲哀を感じます…。
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