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肉体の悪魔のleylaのレビュー・感想・評価

肉体の悪魔(1986年製作の映画)
3.8
レーモン・ラディゲの原作をベースに、大胆な脚色を加えたマルコ・ベロッキオ監督作品。

高校生のアンドレアはジュリアという女性に一目惚れし、ジュリアもまた若いアンドレアに惹かれていく。ジュリアは精神的に不安定な女性で、テロ行為で投獄中のフィアンセもいる…。という青年と年上女性の刹那的な恋を描く。

冒頭、屋根の上で自殺しようと狂乱している黒人女性が、主演のジュリアと目が合ってから落ち着きを取り戻す。まるで同士のように通じ合った瞬間を捉えた描写がすごーい。

セックスシーンやヤバいフェ○シーンなど、一歩間違うとただの官能作品なのに、ベロッキオ監督の演出によって最後まで引き込まれ、考える余地のある知性的な作品になっている。知的すぎて受け取れてません。

今作は監督が精神分析に傾倒していた頃の作品だけど、イタリアの社会的背景やイデオロギーを散りばめながら、信仰心の懐疑も感じ取れる。

ジュリアのフィアンセはテロリストで刑期を逃れるため身を売った。それは彼女にとっては魅力の失せた男の象徴だったと思う。

ラストに青年が先生の前でダンテやアンティゴネについての問答をする。その間、カメラはジュリアの表情を長回しで捉える。その時の表情の変化が素晴らしい!結局、彼も普通の大人になって彼女から離れていくに違いない。本能のままにしか生きられないジュリアの孤独は一生埋められないだろう。

精神不安定で色情症、危うさと狂気を秘めた女性を演じきったマルーシュカ・デートメルスの怪演が光っていた。
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