囚人13号

ふしだらな女の囚人13号のレビュー・感想・評価

ふしだらな女(1927年製作の映画)
3.4
大時計の振り子と裁判官の手元で揺れる片眼鏡への思わずハッとさせられるディゾルブが退屈な物語には勿体ないくらい贅沢な演出だった。

あとは家族が食卓を囲んでいるロングショットの不気味すぎる光景、自宅なんだろうが大聖堂のように天井が高く、画面に全景が納まらないほどの空間とは余りにも不相応な食事という行為も然り、『イントレランス』の如く神秘的な照明設計に彩られたあのショットの強度は計り知れない。

脚本は退屈なのだが、正当防衛かと思われた裁判からあの展開に持っていくヒッチコックは女優を徹底的に虐めているし、その女性蔑視的作風は後の『鳥』をはじめ色々と見られるがこの辺りは今になってフェミニズム云々と批判されているらしい。(そんなやつこそ本作のラストを見なさい)。
個人的には終盤の、主人公が今夜家を出るとある女性に告げるシーンの倒錯性が凄い衝撃。別れの儀式的なキスだがこれはアップで撮っていたら検閲に引っかかっていたであろう名場面。
囚人13号

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