邦題がいかにも昭和一桁だけど、何より天才的な即物性と画面の傾斜に唸る。ヒロインが初めてロイドの姿を認めた瞬間のアップ、尋常ではない光の溢れ具合ですぐに一目惚れと分かるのだが、この過剰とも思える大胆な画面の饒舌さこそ時代を問わず映画話法の理想ではないか。
確かに喜劇なのだが下手すると泣かされる、『乗合馬車』のようなごつい父と兄たちに囲まれて暮らす色白の主人公。
前半のシチュエーションギャグも隠れる/逃げるの反転と反復で、兄弟相手なので捕まったらもちろんボコられるがそれ以上の危機感はなく、シティ派のロイドが農園に放り込まれると翻弄する側に回るんだな。しかし後半の船上におけるそれは紛れもなく死が孕んだ活劇となっていて見事。
ロイドはチャップリンやキートンと比べると結構リア充で、女性に軽蔑されることなど殆ど無いのだが、しかし気弱な彼をいつも勇気づけてくれるのが祖母であり恋人であり…ラストでめでたく結ばれる女性なのだ。