戦後ホラーの名門ハマーフィルムによるホームズもの。ハマー製作のためかOPがホラー映画にしか見えない。
後にピーター・カッシングの当たり役となるシャーロック・ホームズを初めて演じた作品でもある。自身も原作ファンだったカッシングの徹底的に研究された演技が評判を呼んだらしいが、なるほど確かに素晴らしい。
パイプの扱い、慇懃無礼に喋る様子、自らの推理を披露する際の気取った動作がいかにもホームズらしい。後続のジェレミー・ブレットがグラナダのドラマシリーズで演じた姿と重なる部分を感じたのは恐らく彼がカッシングのホームズを研究した由縁だろう。
今まで観た中で一番クリストファー・リーが若々しく、また、かなり背が高いので初めて彼を美男子だと認識出来た。難点は背が高すぎるせいで、相対的にホームズが小柄に見えてしまうことだ(カッシングも182cmあるので決して小柄ではないのだが)。
沼地のシーンは陰気なのは良いが全体的にパッとせず小粒でセット感が漂う。もう少し広大な、ダートムアを意識させる広角の映像が欲しかった所。
肝心のバスカヴィルの魔犬だが、ホラーのハマーならさぞかし恐ろしい怪物を用意してくれるのかと思いきや大分あっさりしてて拍子抜け。「犬に覆面をさせていた」と台詞でわざわざ説明してるが顔もいまいち映ってないのでどう怖いかもよく分からない。また、原作の「口にリンを塗っていたので光って見えた」という魔犬最大の特徴すらなかったので、ただちょっと大きい野犬に襲われたようにしか見えず、盛り上がりに欠けたのが残念。
長編を要約して100分で映画化しているため原作内のサイドストーリーが大幅に削られている。かと言ってホラーに寄っている訳でもミステリーでもなく、なんとも中途半端な仕上がり。