TAK44マグナム

ミラージュのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

ミラージュ(2007年製作の映画)
4.2
お手製ヒーローが街を救う!


南米チリ産の自警ヒーローもの。
「キック・アス」や「スーパー!」と同ジャンルのアクション映画ですが、他の素人ヒーローと決定的に違うのが、本作の主人公
マコは日頃から鍛えに鍛え、かなりの格闘能力を秘めているというところ。
主演のマルコ・サロールがとんでもなく動ける空手家なので、メチャクチャ速い攻撃を繰り出し、並みの相手なら一撃KOなのです!
なので、普通に格闘アクションとして観ても満足のゆく代物。
中盤の格闘ファイターたちとの戦いは、ブルース・リーに影響を受けたような感じで非常に楽しかったし、微笑ましくもありました。
基本的なローキックからの崩しやフェイクからのカウンター攻撃に加えて、強烈なあびせ蹴りや回転系のキックなどトリッキーな動きもあって目をみはりましたよ。
特に重力を無視したようなサマーソルトキック(だと思う)が素晴らしい!


ストリップバーの用心棒として働くマコは、少年時代に家族を通り魔に殺され、生き残った弟も性的被害を受けて精神を病んでしまっているという、ヘヴィ級の過去を持つ男。
ある夜、ジョギングしていると女性の悲鳴が聞こえてくるじゃありませんか!
なんと、強盗たちが近所の家に押し入っている真っ最中。
とっさに1人を倒したマコはそいつのマスクをかぶって家に突入、あっという間に残り2人も片付けて家人を救い出します。
助けた女性がニュース番組のレポーターだったものだから、翌日のテレビで大々的に「ヒーロー」として報道されてしまい戸惑うマコ。
何よりも驚いたのが、病院で引きこもっている弟がヒーローに触発されて症状が改善されてきていた事です。
弟が喜んでくれるならと、マコはお手製のマスクを被って「ミラージュマン」と名乗り、悪党をしばき倒す毎日を過ごすのでした。
そんなある日のこと、警察を名乗る男から連絡がきます。
「子供を誘拐している組織を潰して欲しい」
マコは相手が残虐なギャングだと知りつつも、ミラージュマンとして戦いに赴くのですが・・・


おいおいおい!
警察〜!!
なんで児童誘拐組織の情報がちゃんとあって、その犯罪も立証されているのに警察自身はまったく動かないんだよ!?
怪しいオッサンが1人だけ味方ってどういう事なの?(←しかも、ほぼミラージュマンに任せっきり)
チリにはマトモな警察ないんかい!?
ミラージュマンは強いといっても超能力者でも無ければ大金持ちでもない、ただの一般市民だよ?
その一般市民に、武装した凶悪ギャングを潰せって依頼する警察ってどうなの?
完全に自分たちの仕事を放棄してますがな・・・(汗)

ズボンが脱げないコントなどコメディタッチの演出も相まって、出だしは暗くても本当は明るくライトなテイストなのかな〜?などと気を抜いていたらどうしたことでしょう。
後半はガラリと雰囲気変わって、深刻になってゆきますよ。
殺されかけるし、マスコミには騙されるし、嫌になることばかり。
いっそ死んで自由になろうかな・・・みたいになっているところへ、ギャングへのリベンジのチャンスが訪れます。
・・・って、おい!
またもや、無能警察が無茶振りしてきたぞ!
たぶん大勢の警官をだすほど予算に余裕が無いんでしょうな。
だって、街中ではゲリラ撮影ぽかったりするし。

ともかく、怪しいオッサンが「君に期待しているぞ」なんて言うものだから再度ヤル気をだしてしまうマコ。
おまえはバカか!
どう見ても利用されているだけじゃないか。
でも少女も助けたいし、ミラージュマンに憧れている弟の手前、デカい事件を解決したいのもあって、ミラージュマン復活です!
決戦前にオリジナルの手甲やら煙幕やらと装備を製作(やたらと器用なマコ)、ついに最終決戦の幕が開くのでした!

ここからいきなり殺伐としだすのでビックリしましたが、容赦なく銃を撃ちまくるギャングたちに対して飛びナイフや隠しナイフで対抗するミラージュマン。
いくらカラテの達人といっても超人すぎる!と言うか無謀!
それまでの格闘アクションは何だったのか、いきなり首チョンパがあったりして侮れませんよ。
いつの間にやらホラー映画に!
これは、不殺のはずのバットマンが突如として気が狂ってジョーカーの首をはねちゃうようなもので驚きましたねえ。

希望を残しつつもラストは切ない・・・
涙で前が見えにくくなるってのは無かったけれど、変な余韻が残りました。
お話はとことん雑ですが、それでも「弟のために戦う」という動機が明快で、一本スジは通っていますよね。
マコが醸し出す無骨さも良いし、オートバイをくれる偽ロビンのキャラもアホだけど最高。
この偽ロビンがキック・アスみたいなキャラで憎めない。
ニュースリポーターのカロルも嫌なところもありつつ、けっこう美人さんだし、サム・ライミ版スパイダーマンのキスシーンっぽいのがあったりします。

それにしてもマルコ・サロールは素晴らしい。
演技は棒だけど存在感があるし、ルックスも精悍と言えば精悍で良いし。
なにより、無駄のない動きで実戦的に見えるのが感心しました。
全盛期のヴァン・ダム、いまで言うとスコット・アドキンスと戦っても勝てそうな雰囲気があります。
動けるうちに、どんどん世界へ進出していって欲しい逸材です!

「キック・アス」が2010年公開なので、映画としては3年先輩な本作。南米も治安が悪いところが多いので、潜在的にこうしたヒーローを求めているのかもしれませんね。
本国ではヒットしたのかな?
素人自警ヒーローものとしては、本格的に強いというのが珍しいので、このジャンルがお好きなら、かなりオススメです。


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