愚かなる人類は有り得ない恐怖の現実を突きつけられた時、自らの罪を拭う為に究極の選択に迫られることになる。
有り得ない現実が有り得る現実となったなら、それは恐怖の贖罪で償うことでしか回避できないのか…。
2000年4月に全米で放送されたCBSテレビ制作の生放送ドラマ『FALL SAFE』は、1962年に書かれた軍事スリラーの傑作で〝シドニー・ルメット〟も映画化した『未知への飛行』を渋い俳優陣で再現。
同年に公開され内容が被るキューブリックの『博士の異常な愛情…』と並び称される作品だが、『未知への飛行』も緊張感と深層心理を上手く表現し硬派でとても好き。
《物語はライブで進行する。これは実験ではない。》
よくもまあこのドラマを生放送で中継したことに関心するが、俳優はもちろん制作スタッフの甚大なる努力に敬服する。
それだけ違和感なくスムーズにドラマは展開し、緊迫感と人間心理を露呈する描写が素晴らしい。
生放送だからこそ限られた(良く考えられた)設定の中で物語が進行し、陰影を強調する照明の妙と様々なカメラワークは苦悶の表情を捉える。
CG全盛の今から観れば物足りなさは有るだろうが、生身の人間ドラマが表現されCGでは再現できないものがココにある。
それは舞台演劇のライブとは明らかに違い、複数のシチュエーションを効果的に使い臨場感溢れる映画として成り立っている。
余計なものを省き物語にとって本当に必要なものだけを整えれば、これで良いんだとつくづく思い知らされる..★,