一人旅

シュトロツェクの不思議な旅の一人旅のレビュー・感想・評価

5.0
ヴェルナー・ヘルツォーク監督作。

ニュージャーマンシネマの重要人物:ヴェルナー・ヘルツォークがキャリア初期の1977年に撮り上げた傑作ドラマで、成功を夢見て渡米した男女の行く末を描きます。

刑務所を出所したばかりの男ブルーノが、旧知の女性エーファとアパートの隣人である老人シャイツと共に、貧困と鬱屈の現実から逃れるべく、成功を夢見て母国・西ドイツを離れアメリカ・ウィスコンシン州に渡って人生の再出発を試みていく様子とそれぞれの末路を映し出した“ドイツ人のアメリカンドリーム”の始発と終点を眺めた異色のロードドラマとなっています。

未来への希望を胸にウィスコンシンの田舎町に辿り着いた3人のドイツ人男女が移動式住宅をローンで購入し、自動車整備工場やレストランのウェイトレスとしてそれぞれ懸命に働きながらも、次第に資金繰りが上手くいかなくなって追い詰められていく様を淡々と見つめたシビアな人間ドラマとなっていて、渡米すれば何とかなるだろうという漠然とした希望とは裏腹に、資本主義大国アメリカの非情な現実に為す術なく押し潰されていく人々の一部始終を映し出しています。

アメリカンドリームを夢見るドイツ人たちの奮闘と破滅をアメリカ北西部の異国の情景の中に描き出した辛口の人間ドラマで、同監督『カスパー・ハウザーの謎』(1974)に続き主演を務めたブルーノ・Sが現実に敗北する主人公を物静かに演じています。
一人旅

一人旅