カラン

私はゾンビと歩いた!のカランのレビュー・感想・評価

私はゾンビと歩いた!(1943年製作の映画)
4.5
「私、ゾンビと歩いたの。ゾンビなんて言葉も知らなかったのに。」

これは映画冒頭のヒロインの声で流れるナレーションである。気の遠くなりそうな長い海岸線が斜めに伸びて来ている。空には池の踏み石のように雲が点在している。途方もなく穏やかな光景の中に近づいてくる人影。1人は白い服の女。少し後に続くもう1人は異様な背の高さの黒い人物で、足取りもおかしい。

当然、鑑賞者はこののっぽのおかしなのが、本作のゾンビであるのかと思うだろう。独特の語り口の映画であり、兄に惹かれる看護婦、兄嫁と弟の悲恋、ブードゥー教と母親の傀儡といった難しい要素が絡み合うので余計にややこしいく、おまけに安っぽいホラー映画のようなタイトルがついているのだが、古典の大作のような風格がある。無数の蕾を蕾のままに、語り切らずに余韻で味わう調子である。だから、オープニングの海辺もずーっと伸びてくる。

闇夜の塔で、兄嫁ににじり寄られるところはだいぶ怖いが、おおむねホラーということは忘れて観た方がよいかと。


DVDはモノラル2chで、ブードゥーの太鼓の低音もしっかりしている。画質も一部乱れるが、おおむね良好。
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