ミシンそば

暗殺の詩/知りすぎた男どもは、抹殺せよのミシンそばのレビュー・感想・評価

2.9
恐らく10年以上未開封のまま放置していた円盤を、今日漸く観ました。
ロベール・アンリコ監督の、日本未公開サスペンス作品。

序盤の意味ありげな閉鎖施設の描写と、エンニオ・モリコーネの“不敵”とさえ評せるスコアで多少期待は高まるが、ジャケ写の意味ありげな首傾げトランティニャンもその序盤のうちにさっさと出てきて、あとは危機感の欠如した作家夫婦との交流がダラダラと続くばかり。
不自然なくらい逃亡者を受け入れる夫役のノワレもそうだが、案外図々しくって「お前本当に逃亡者だよな? 機密を握って追われている逃亡者だったよな?」って何度もなった。
妻の方の感性は存外普通で異物でしかない逃亡者をはじき出したいけど夫には強く言えない、そりゃあ絶望的な逃避行って言われますよ。

アンリコ作品は苦みと言うより「エグみ」に強い味を覚えることが多い(その「エグみ」をルッコラサラダみたく美味しく頂ける「追想」みたいな作品もあるけど)が、本作は間違いなく平常運転。
恐らく逃亡者の言い分は全部正しいんだろうけど、そうとは到底思えないように観客にも観せる演出は絶対に意図的なものだろう。
そこに抱く感情の快不快はともかく、アンリコはその絶望的な逃避行の結末を狙い通りに出力していた。