がぶりえる

突撃のがぶりえるのレビュー・感想・評価

突撃(1957年製作の映画)
4.4
バカバカしい戦争はやめろ
これは戦争という名の茶番

キューブリック本気の皮肉。スペクタクルさも、感動的な人間ドラマもなく、ただただ戦争という空っぽで無意味な命の奪い合いを痛烈に皮肉る。この映画の面白いところは、無駄に突っ込んで、無駄に死ぬだけが戦争じゃなくて、戦いに負けた後の味方同士での「もう一つの戦争」をメインに描いているところ。そここそ本当に無意味な争い。

突撃失敗の責任追及裁判のバカバカしさ。全く中身のないくだらない裁判なのに、バカでかい一丁前の講堂で厳かにやる所が凄く皮肉っぽい。何かと、「国家」とか「国民」とか規模のデカい主語を持ってきて、建前だけを作ってくる感じが余計空っぽさを色濃くする。皆、自分に責任が及ぶのが嫌だから、どんどん下の者に責任を擦り付けて、負の連鎖が波及していく。だから結局、1番下っ端の1番事情のよくわかってないヤツが殺される。本当に胸糞が悪い。全てがくだらないただの茶番。極めつけは、ラストの処刑シーンの虚無感。瀕死の兵隊を担架に乗せまま処刑台にかけるの胸糞悪すぎる。

キューブリックが怒りを噛み締めながら「まじで戦争なんて何の意味があるんだよ」って嘆いている感じがした。個人的には「フルメタル・ジャケット」よりこっちの方が好き。皮肉の効き方が凄くキューブリックっぽくて好み。最高の戦争映画のひとつ。こんな時代だからこそ皆観よう。