イルーナ

夢のチョコレート工場のイルーナのレビュー・感想・評価

夢のチョコレート工場(1971年製作の映画)
4.6
来月公開される『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』。
宣伝でジョニデとバートンの『チャーリーとチョコレート工場』の前日譚のように紹介されてますが、ウンパルンパの姿が全然違う!と思った方もいるのではないでしょうか。
それもそのはず、実はこの作品は『夢のチョコレート工場』の方をベースにした作品。
『夢の~』の方は初耳の方も多いかと思いますが、実際に日本では劇場公開されてない。
一方本国では、カルト作にして誰もが知る定番中の定番という扱いらしい。何なんだこの差は。
(しかも初公開時には不入りだったけど、テレビで何度も放送されるうちに人気になったという、後に定番化する作品の典型的なパターンに当てはまっている)
おかげでシャラメ版の方の宣伝がチグハグ極まりないことになっています。どうしてこうなった。

実は私自身、『チャリチョコ』の前に本作を観ていました。
昔、近所にあったビデオ屋で「聞いたことない映画だな?でも面白そう」と思って借りたら予想以上に面白くて、こりゃ掘り出し物だなと思ったのを覚えています。
そして数年後にジョニデとバートンの黄金コンビで映画化されると知った時は「この作品そんなに有名だったの?!」と衝撃を受けました。
で、久方ぶりに再見してみると……

……すまんバートン、こっちの方が好きだわ……
良く言えばバートン色濃厚、悪く言えば演出がドギつかった『チャリチョコ』と比べて、こちらはあっさり風。
バートンの作風を反映して人間不信かつ情緒不安定だったジョニデ版ウォンカより、ジーン・ワイルダーのウォンカの方が品があって好き。
さらにこっちのウォンカは変に掘り下げられなかった分、ミステリアスというか、神秘性がある。
(当時のバートンの事情を考えたら仕方なかったとはいえ)、ウォンカ側の家族ドラマが付け足されて面食らった『チャリチョコ』と違い、こちらはライバル企業の伏線を回収しつつスパっと終わってくれた。
ウンパルンパもこっちの方が可愛いしね……
ワガママ娘ベルーカ・ソルトは終始がなり立ててて絶妙にムカつくキャラ。子供たちの中で唯一キャラソンがあったしちょっと優遇気味?
バートンの作風は好みが分かれるけど、否定派の気持ちもちょっと分かったかも。

とはいえブラック要素はもちろんありまして、ダズル迷彩柄の部屋に閉じこめられそうになったり、チョコレートの川をゆく船に乗ってたら、トンネル内でグロ映像(鶏の首チョンパ……)を見せつけられたり。
善人の象徴として描かれたチャーリーとおじいちゃんすらも誘惑に負ける場面があって、そこはちょっと衝撃。さらに他の子供たちが工場から出てくる場面がない!
そしてウンパルンパの説教ソング(初期のCG技術のスキャニメイトが使われてる!)はやっぱりこっちの方がキャッチーだよね。
「ウンパ・ルンパ、ドゥンパティ・ドゥ♪」

追記
工場内部はまるでディズニーランドみたいだな、特にチョコの川の船はジャングルクルーズみたいだなと思っていたら、何と本作の美術監督はディズニーランドのコンセプトアーティストだった!
道理で完成度高かったわけだ……
イルーナ

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