イルーナ

ラテン・アメリカの旅のイルーナのレビュー・感想・評価

ラテン・アメリカの旅(1942年製作の映画)
3.7
国務省から、アメリカと南米の親善のためにとの依頼を受けて作られた本作。
(その裏には、当時イタリアやドイツからの移民が多かった南米でファシズムが台頭するのを恐れたという一面もありますが……)
本作には何と実写パートがあり、スタッフたちが現地を取材・スケッチし、アニメパートに流れるという構成。
そのためドキュメンタリー調であるのですが、場でささっと描き上げられるスケッチはまさに職人技。
エピソードは4つ。

・ドナルドのアンデス旅行

チチカカ湖にやって来たドナルドは、葦舟やラマといったインカの末裔の文化に触れる。
ラマって当時アメリカ人目線だと、「人間を馬鹿にしている」「とても傲慢な性質の奇妙な動物」と、いいイメージを持たれてなかったのか……
そうしたエピソードから『ラマになった王様』が作られたのでしょうか。
笛の音色で操作するというのも、ちょっと『世界残酷物語』テイストを感じたり。
にしてもドナルド……吊り橋を歩いていることに気づきさえしなければ快適な旅だったろうに……(涙)

・小さな郵便飛行機ペドロ

両親が体調を崩したことにより、初めてのチリ⇔アルゼンチン往復に挑むことになった郵便飛行機ペドロ。
しかし、帰りに禁じられていた最高峰“アコンカグア”に接近してしまい……
ナレーターに「郵便物はいいから上昇しろ!」と言われても仕事を優先するペドロが健気。
ラストは燃料切れで墜落、こりゃもうダメだ……→生きてました!めでたしめでたし!
何と、助かる過程は全部省略!ナレーターも「どうやって来たのか私にもわからない」と投げ出す始末。
そして命がけで運んだ郵便物はたった1枚の手紙だったというのも、健気というか人を食ってるというか……

・グーフィーのガウチョ

カウボーイをやっていたグーフィーがアルゼンチンのパンパに飛ばされ、ガウチョ文化を体験する。
単なる南米版カウボーイというだけでなく、アルゼンチンでは独立のシンボルや英雄としても描かれるガウチョ。
それだけに、衣装や道具、食文化(アサード食べたい!)までかなり細かく紹介していて、ガウチョ文化に深い敬意を感じることのできる一編でした。

・ブラジルの水彩画

ブラジルを代表する名曲『ブラジルの水彩画』。
その名の通り、水彩絵の具で描き綴られていくブラジルの自然。
滴る絵の具が根に、花に、フラミンゴになる。バナナの絵に黒い絵の具が滴りオオハシの群れになる。
特に赤・青・黄の奇妙な形の花が蜂を飲みこんだと思ったら、ドナルドに変化するのにはおおっとなりました。
そして、ドナルドの友人ホセ・キャリオカ初登場。線が描かれ色がついてやがて動き出すというのは、アニメーションの根源を思い出させるものがあります。
アニメの語源は「魂」を意味するラテン語ANIMAから取られているわけですし。
このホセ、伊達男スタイルに葉巻というのがオシャレだし、その後二人でカフェ行って一杯やるというのもオシャレです。
クラブで踊るドナルドの姿にブラジルの夜景で締めくくられた本エピソードは、どこか大人びたムードなのでした。
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