マヒロ

拳銃貸しますのマヒロのレビュー・感想・評価

拳銃貸します(1942年製作の映画)
4.0
殺し屋のレイヴン(アラン・ラッド)は、ある化学会社の重役であるウィラードという男の依頼により暗殺を行うが、支払われた報酬が強盗で奪われた紙幣であったことから警察に目をつけられ追われる身となってしまう。ウィラードに嵌められたと気がついたレイヴンは逃亡を続けながら復讐に向かうことにし、道中出会ったエレン(ヴェロニカ・レイク)という女性を半ば人質のような形で道連れに行動するが、実はエレンは政府の命令で敵国の協力者を探るスパイだった……というお話。

化学企業の陰謀とそれに巻き込まれた殺し屋、それを追う警察と政府のスパイ……というやや混み入った話だが、80分という短めのランタイムですっきりとまとめられていて良かった。
主人公のレイヴンは冷酷な殺し屋だが猫が異様に好きというイカしたところがあり、猫を乱暴に扱った人を見てカッとなってぶん殴ったり、窮地の際に野良猫が現れたら「幸運のお守りだ」とかいって急に上機嫌になったりと、普段のクールさとは打って変わって感情的になってしまうのが面白い。幼少期のトラウマから性格が歪んでしまったということを語るレイヴンだが、それを自覚している時点で性根は猫好きの平凡な男であり、そのトラウマからの防衛のためにサイコパスのふりをしてるんじゃないかな……とも思えてくる。
演じるアラン・ラッドと言えばやっぱり『シェーン』だが、カタギの人間ではない浮世離れした存在ながらどこか親しみのもてるところがあるのがどことなく似ている。

戦時中の映画ということもあってか、アメリカにとっての敵国(つまり日本)との諜報戦が関わってくるなどなかなかスケールは大きい話だが、あくまで舞台設定がそうというだけで、主人公レイヴンの周りからは逸脱しないところがちょうど良い作品だった。

(2023.153)
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