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ココ・アヴァン・シャネルのtakのレビュー・感想・評価

ココ・アヴァン・シャネル(2009年製作の映画)
3.3
ファッション界で並ぶ者のない成功を手にしたココ・シャネルの若き日々を描いた作品。当時のフランスは女性の生き方にまだ真の意味で自由がなかった時代。映画で見る限り、男性にすがる生き方がよしとされていたようだ。シャネルも酒場で歌っていたところを将校エティエンヌ・バルサンに見初められ、彼のお屋敷に居候することになる。そこで出会う英国人男性カペルとの恋。そして彼の協力でココは個性と才能を発揮し始める。

正直なところ、僕はこの映画にシャネルがいかにしてあのシャネルスーツを作るに至ったのかを知ることができるか、と期待していた。彼女がポロを観戦しているときに、寒さから騎手のセーターを借りたことがそのきっかけとされている。確かにポロをする場面は登場するが、ルーツを感じさせる場面ではなかった。

この映画が重視しているのは特に恋物語の方だ。”本当の私を理解してくれる男性”。そして彼との悲しい結末。シャネルを通じて、観客に「あなたの相手はあなたを理解してくれていますか?」と問いかけられているかのようだ。

「あなたは私を恥じているでしょう?」
とバルサンに言う場面は印象に残る。人誰もがつきあう相手から様々な影響を受ける。それは男も女も同じだ。シャネルが女性をコルセットから解放して動きやすいファッションを考案したのも、つきあっている男性からの影響が多大にあるのは事実なんだろう。

お屋敷での退屈な日々の描写が淡々と続くことに途中飽きてしまいそうになった。「成功の秘密」って部分は観客の想像や予備知識に委ねられたような感じ。でもこの映画を観る上ではそこを受け入れないといけないのかな、というのが感想。ハリウッド映画のように「伝記」としてわかりやすく示してくれることは、そもそもこの映画の目的ではないのだ。いろいろな経験をしながら、主人公が人間として強くなっていく姿が中心なのだ。

マリー・ジランが出演しているのも嬉しい。
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