カラン

バンディットのカランのレビュー・感想・評価

バンディット(2009年製作の映画)
4.0
なかなか面白い。画の質感、色味が良く、幻想描写も大らかで芸術的。監督はアニエスカ・ホランドとその娘のカーシャ・アダミクのメガネ女子2人。最初にドイツ語が入った気がしたが、大部分はポーランド語かと。

ロビンフッド的な義賊にイケメン据えてアートムービーを全編に炸裂させたところ、マーケティングに失敗して、Filmarks上で投稿数8で平均2.2という哀れな評価を頂戴することになったか。(^^)

火の粉のフォルマリズム的な表現が美しく、残酷描写も遠慮なくやっており、性愛も盛んに取り上げる。スロバキアンダンスをしているとカメラもぐるぐるPOV。水中での幻想が多数描かれて、ハート形の心臓が燃えている女が水面に立ったり、水を掻く無数の裸の女たちをスロモーションで漂わせたりと、やりたい放題。一発めの幻想は、山肌を駆けおりてたら空を滑空しちゃうからね、ムササビみたいに。まあこのムササビはショットとしては今ひとつなんだけど。この一発目の飛行幻想をソクーロフの『日陽はしづかに発酵し…』くらいに振り切ってたらね。ただまあ、このムササビは幻想だという説明はしないまま、しれっとカットする監督の親子2人は絶対に楽しかっただろうな。(^^)

レンタル用のDVDで2chステレオ。オーケストラの音がやけにいい。アニエスカ・ホランドの音響スタッフは優秀だと思う。次作の『ソハの地下水道』(2011)ほどではないが、ちゃんとした弦楽の音。低音は少し足りないか。マイクのセッティングとミキシングが良いのだろうか?

フィルム撮影なのかも。非常に豊かな映像は抜群の深みがある。デジタル撮影って確かに解像度が高くてノイズのないのは美点なんだけどね、なんとなく飽きるんだよね、画質そのものに。この『バンディッド』はストーリーラインは大したことはないのだが、深みのある色と質感が素晴らしいと思う。

レンタル用はなぜか前編と後編に分かれていますな。容量が足りないはずはないから、代理店が妙なことを考えたのでしょう。
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