さいとぅおんぶりー

狼の時刻のさいとぅおんぶりーのレビュー・感想・評価

狼の時刻(1966年製作の映画)
4.8
芸術家の抱える懊悩と夫婦間の奇妙な自己同一化を映した作品。

スヴェン・ニクヴィストが撮る幽玄で絵画的なコンポジションは思わずため息が漏れてしまう。
美しい画面構成に対して過激なまでの不協和音のコントラストが、荒唐無稽なオカルティズムに奇妙な立体感と実存感を与えている。

作品内容は神智学的で、最初の回想から既に現実を侵蝕しており様々な示唆と解釈を容認するだけの土壌がある、非常に豊穣な内容で何度観ても新しい発見がある。

個人的には、ベルイマン作品は深いトラウマと痛みを伴う形で記憶される事が多いイメージがあり、観る前に身構えてしまうのだけれど、狼の時刻だけは身構えずに妄想と追憶の世界に浸れるので観やすさも含めてとても好き。