イチロヲ

若い娘のイチロヲのレビュー・感想・評価

若い娘(1960年製作の映画)
4.0
白人女性に対する強姦罪を着せられ、孤島へと逃亡してきた黒人男性が、純真な少女との交流を深めていく。レイシズムの気持ち悪さを徹底的に掘り下げている、ヒューマン・ドラマ。ピーター・マシーセンの短編を原作に取っている。

肌の色で人間的価値が決定付けられる時代の物語。理性を重んじる紳士的な黒人男性、本能の赴くままに行動する粗野な白人男性、穢れを知らない無垢な少女。この3人が、人間関係の泥沼化を演じていく。

端的に言うと、色眼鏡をもたない少女が、大人同士のグロテスクな掛け合いに巻き込まれていく内容。少女からすると「黒い肌をもつ、新しい友だち」が現れただけのことなのだが、色眼鏡を掛けている大人からすると、そんな単純な話では収まらない。

ドロドロとした人間模様から「宗教の無力さ」を諭してくる論法が、まさに無神論者ブニュエルの真骨頂。鑑賞者の生理を刺激してくる語り口と舐めるような脚フェチ描写が鮮やかに決まっている。
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