TAK44マグナム

死神ランボー 皆殺しの戦場のTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

3.1
「引きこもって生きるか、誰かのために死ぬか、俺が決める」
とんでもないキャッチコピー詐欺!


突然ですが、たまに信じられない光景を目にするってことがあるじゃないですか。
飛び出てきたシボレー・コルベットが目の前でクリーニング屋に突っ込んだりとか、バイオハザードで遊んでいたら一瞬で首チョンパされてゲームオーバーとか・・・(どちらも実話)
そして、「死神ランボー」の平均評点が(これ書いてる時点で)4.1だったりとか!
何か間違っているんじゃないかと目をこすりましたが、やはり4.1・・・フィルマークスのレビュアーの皆さん!狂ってます!
一本の映画としたら、これはただの鬱映画ですよ、皆さん!
しかも、ものすご〜〜〜く安い!
安い「タクシードライバー」!
プロデューサーがロイド・カウフマン!つまりはトロマ製品!

邦題は「死神ランボー/皆殺しの戦場」ですけれど、ランボーってのはご存知シルベスター・スタローンの代表作からとっているのは明白。
でも、ランボーはキャラクターの名前じゃないですか。
本作には、ランボーなんて何処にも出てきやしません。いや、もしかしたら出てくるチンピラの中にランボーってのがいたのかもしれませんが、少なくとも主人公はフランキーといいます。
ちなみに皆殺しの戦場も出てきませんよ!戦場シーンの殆どが記録映像ですし、(やたらと軽装備の)フランキーが延々とスローモーションで走っているところは、多分どこか近所の林です。

さて、フランキーですが、彼はベトナム戦争の従軍者で、捕虜になって三年後に救出されて帰国しました。
どうやらトラウマになるような悲惨な事件があったらしく、毎晩ベトナムの夢をみてはうなされて起きる毎日。
とんでもなくボロなアパートに奥さんと赤ちゃんの三人暮らしで、職もないので完全文無し、食べ物も清潔な衣服もない暮らし。
トイレはつまってるわ、家賃滞納で退去命令がでています。
オマケに赤ちゃんは、枯葉剤の影響からか奇形児で生まれており、電子音で泣くのです!
これこそ最底辺!どん底じゃないですか!ここは本当に自由の国アメリカなのか!?
実のところお金に関しては、とあるツテもあったのですが、最後の頼みの綱として連絡をとったらもっと底辺に落とされる羽目になるフランキー・・・もうダメポ!

家にいたところで奥さんと喧嘩になるだけなので、フランキーはいつものように街をブラつきます。
映画の八割ぐらいはフランキーがただただブラついているだけという、実に野心的な尺配分に睡魔が襲ってきますが、そこは一応タイトルからして何かホラーな事が起きるんだろうと期待して観続けましたよ。

薄毛のくせして似合わないロン毛なフランキーは、金を借りている連中に捕まったり、ヤク中のどん底仲間とくっちゃべったり、何故か部屋の壁にゾンビのポスターが貼ってある職安で「なんもないよ」とあしらわれたり、売春屋のオッサンに殴られたり(ここでタクシードライバーな展開になるのかと思いきや何も起きないという・・・)、たまにベトナムがフラッシュバックして悶絶したり・・・そんな一日を過ごします。
それをじっと我慢しながら観ている自分を、生まれて初めて褒めてやりたい思いましたね!

「このままじゃ家に帰れない」
そう思い詰めたフランキーがある行動に出たことで、最終的にドイヒーな事件が起きるわけなのですが、これがまた本当に観ていて鬱!
特に赤ちゃんの扱いはマジで酷く、そこまでするなよなって思いました・・・が、なんとなくフランキーの「もうこんな人生は嫌だ」っていう気持ちも分からんでもないのでね。
あくまでもフランキー自身に責任がある(例えば二人目の子供がお腹にいるのですが、一人目のことを考えれば避妊しないのは無責任すぎるでしょう)とはいえ、祖国のために命を張った愛国者に何一つ手を差し伸べない社会システムは間違っているのではないか?
こんな問題提起が「ランボー」ぽいと言えばそうだし、「タクシードライバー」を観て、「これだ!これを撮りたいんだ!」と監督が息巻いた(・・・んだと勝手に想像)のは映画作家として正しい。
ただ、予算とスキルが圧倒的に足りなかったのは否めませんが・・・。

これ書いている本人もフリーランサーな仕事をしているので会社組織も社会も守ってくれる訳ではなく、すべては自己責任。
やはり仕事がなくて、何週間も手製のチラシを配ってブラつくしかない時期もありましたし、これからもないとは言えません。
ふと、堕ちるところまで堕ちて、路上暮らしになるんじゃないかと不安になることも実際あります。
だから負け犬っぷりがハンパないフランキーの姿に自分を投影してしまいましてね。
ヤツの気持ちも分かるし、とは言え「どうして映画観てまで、こんな鬱っぽくならないといけないんだよ!」と憤りを感じたのもまた事実。

そんなこんなで、かなりダウナーな映画なのに音楽だけは能天気だったりして作りはかなり雑な本作。
しかし、格差が如実に広がってきた現在の目でみると、こんな映画でも「貧乏は恐ろしい」という現実をズバズバッと直球でぶつけてくるところに、作品がもつポテンシャル以上の評価を思わずしてしまうのも理解できなくもありません。

でも、職安に並んでいる時に出てきた金髪のオネエちゃんバイカーは一体何だったんでしょ?
勝ち組が負け組たちを蔑視している図を表現したの?
いかにもストーリーに絡みそうに登場して、結局そのまま最後まで出てきませんでしたけど。
そういうワケワカメな部分が作品の限界を物語っているし、下手くそな語り口がせっかくの反戦テーマをオジャンにしてしまっていて残念賞。

せめて、M16ライフルを手に入れて街で乱射しまくるラストなら良かったのに、あまりにもショボボ〜ンなショッパイ締めくくりに、さすがに高い評点はつけられませんでしたよ。
どんよりし過ぎDEATH!
どよどよ。


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