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東京チャタレー夫人のTnTのネタバレレビュー・内容・結末

東京チャタレー夫人(1977年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

 チャタレー事件として本邦を騒がした作品「チャタレイ夫人の恋人」の日本版。ピンク映画だがファッション・ポルノと呼ばれてるらしく、どこかお高くとまった雰囲気がある(音楽もポール・モーリア風)。そしてそれは想像の世界でしかなく、謎の乱行パーティーシーンとかは「きっと金持ちはこんなことしてる!」というのを必死に想像して描かれてるかのようで、ちゃちい笑。そのキッチュさがまた良かったりもする。後のバブリーになる日本の雰囲気を感じつつも、階級間での闘争があり、それを性によって押し並べてしまおうという試みが面白い。

 馬の種付けで興奮してしまい、その近くの積み藁の上で交わるシーンはアニマルすぎて笑った(ワレリアン・ボロズヴィックの作品にも似たようなシーンがあった気がする)。とにかく性行への導入が勢いすぎて、事故に巻き添えついでに事が始まったり、ガラス窓をブチ破ってきたり、湖でしたり、洗車中にしたり…。その豪快さはもはや気持ち良いほどだ。ただ主人公の美緒は結局成されるがままであり、ラストも彼らを捨てるという”引き”の出方しかなかった。上記の豪快さは、肉体労働者の新田が全て牽引してるので、労働階級の男たちのウケは良かっただろうなと思った。美緒役の志麻いずみは京マチ子を華奢にした感じで、映画映えする人だった。

 下半身不随にまつわる映画はなぜかいくつか思いつく。トリアーの「奇跡の海」や、ブニュエルの「昼顔」など、どれも性がまつわる作品だ。男性にとっての根源的な不能への不安が、下半身不随という形で映画にあらわれているのだろう(トリアーとブニュエルという無意識的な恐怖を作風とする二人がこのテーマを取り上げるのは必然だろう)。そんな今作では、主人公の夫がそうなる。普通に立って抱き合うシーンから何の説明もなく、次のシーンで車椅子になっている。この説明不足さが良い、説明しすぎない感じが良い。そんな彼の後半の荒れっぷりも良い。妻の浮気に嫉妬し、逆に嫉妬させるために家政婦に手を出して…みたいな谷崎潤一郎文学さながらドロドロ劇は見応えあり。後半、牛乳をやたら飲む夫だが、牛乳ってなんか狂ったやつが飲みがちだなぁと思った。

 ちゃんとドライブシーンで回想が重なるというヒッチコック的シーンもあり(他のレビューでも「白い恐怖」のオマージュについて言及されている)。
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