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ブニュエル 〜ソロモン王の秘宝〜のakrutmのレビュー・感想・評価

2.7
晩年の映画監督ルイス・ブニュエルが頭の中で構想している次作の内容として、若きブニュエルが画家サルバトール・ダリと詩人フェデリコ・ガルシーア・ロルカとともに秘宝であるソロモン王のテーブルを探索していく様子を描いた、カルロス・サウラ監督のファンタジー映画。スペイン映画界の巨匠であるサウラ監督の作品を見るのは、本作が初めて。ルイス・ブニュエルへのオマージュに満ちた作品である。

でもなあ、残念ながら、本気で退屈だった。ブニュエル、ダリ、ロルカが登場人物なんだから、フィクション的要素を織り交ぜながら彼らの関係を描くなど、いくらでも面白い内容で映画が撮れそうな気がするが、なんとカルロス・サウラ監督が選んだのは、ジュブナイル的冒険譚。「いったい、なぜ?」という言葉とため息しか出ない。

映像的な面でも物足りなかった。前半は三人の功績をオマージュするような会話やシュルレアリスム的な映像が出てくるのでマシ(例えば、ダリの「海の皮膚を持ち上げる」という絵画を映像化している少年が絨毯をめくり上げるるように海をめくるシーンはとても印象的で、映画のポスターにも使われている)なのだが、後半はジュブナイル冒険譚になるので見るべきものはない。超現実と非現実は違うんだよなあ。ラストにあるスペイン内戦のシーンも取ってつけたようで不必要。

でも、映画の構想を練っている現在のブニュエルに起こる出来事が、映画の内容に反映される(例えば、現在の世界でベットメイクをする家政婦のファティマが映画の世界にも出てくる)と言ったメタ的な表現手法は良かった。
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