爆裂BOX

恐怖の精神病院の爆裂BOXのレビュー・感想・評価

恐怖の精神病院(1946年製作の映画)
3.7
ロンドンの精神病院を支配する独裁鬼院長シムズ。患者をいたぶり、非道の限りを尽くすが、勝ち気で正義感の強い女性ネルはシムズの蛮行を許せず立ち向かっていく…というストーリー。
ヴァル・リュートンが製作したRKOのサイコホラーの一作です。ポリス・カーロフが鬼院長シムズを演じています。
シムズが経営する精神病院では患者は劣悪な環境に置かれ、更に患者を使った見世物で金をせしめるという悪行を行っており、有力者モーティマー卿の話し相手を務める女性ネルは、そんなシムズに嫌悪を抱き、モーティマー卿を説得して病院の環境改善を求めるが、シムズの計略にかかり自らが患者として入院させられてしまう、という内容です。
カーロフが演じる精神病院の院長シムズは、モーティマー卿等の有力者に媚びへつらいながら弱者である患者達は虐げて残忍な態度をとり、金にうるさく知力もたけて自分の手を汚さずに会話を操作して自分の思い通りに運ぼうとするという画にかいたような悪役キャラです。主人公ネルを鎖につないだ患者がいる独房に入るよう仕向けるときのそのプライド利用する手口が嫌らしいですね。小物感あるけど、自分が支配できる小さな世界を必死で守りたいという動機は人間味感じられてリアルさ出してたと思います。カーロフの演技も見事でした。
主人公ネルはこの年代の映画としては珍しいかなり勝ち気で正義感の強いアクの強い女性ですが、不利な立場に追いやられてもくじけずにその強い正義感で正面から罵声浴びせたり強気で挑んでいく姿はカッコイイ。でもそれだけじゃなくて、精神病院の患者達に同情して、環境改善謳いながらも自分がその環境に入れられたら患者達に嫌悪示したり、自分の美貌利用してクエーカー教徒から武器入手したり黒い所も描いてるのも良いですね。
主人公の飼ってるオウムにデブ呼ばわりされても「ワハハハハ!」と笑い飛ばしたり、シムズからネルを入院させる手続きにサインするように求められて「彼女は正常だからそれは出来んぞ!」と最初断ったり(結局応じるけど)モーティマー卿も単なる悪役として描いてなかったり、ヒーロー役のガチで頭硬くて融通利かないクエーカー教徒の石工やこまっしゃくれた黒人の少年召使、特権階級自称して患者達の中ではまともな弁護士たちなど他のキャラも負けず劣らす濃いのも良かったですね。
ホラーとしては正直怖いシーンはなく、どちらかというとサスペンスドラマという感じですが、審問会でネルが「冗談ですよ」とお気楽に構えてたらドンドン異常者認定されて入院させられることになったり、患者を使った見世物で患者が苦しんで死んでも見てる貴族たちは笑ってたりするシーンはちょっとゾッとさせられますね。というか、この当時は全身金粉塗ったら皮膚呼吸できなくて死ぬって信じられてたんだな(笑)
ネルが患者達とポーカーで交流したり、その正義感と優しさから内部から環境改善していって患者達の信頼を勝ち取っていくドラマはとても楽しめました。鎖につながれたトムとも正面から言葉をかけて常に一緒に行動するようになる所も微笑ましかったです。
最後シムズが逆転されるのはお約束だけど、そのままリンチされるかと思ったら裁判開かれて、言い分聞いて「この男は正常だからこの部屋から出そう!」となるのは意外だったな。その後の展開もちょっと驚きました。あの置物みたいに動かない女患者ああ使うとは。シムズの末路は一番ホラーしてましたね。
ラストはあんな極悪人だったとはいえあんな爽やかに見殺しにしていいのかとちょっと思いました(笑)あんな頭固かったのに(笑)
サスペンス入ったドラマとしては今見ても十分楽しめる作品でした。