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妖怪巨大女のドントのレビュー・感想・評価

妖怪巨大女(1958年製作の映画)
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 1958年。これは、観た俺が悪いね。しかしそう言っても看過できない所が多すぎる。UFOが多く目撃される米国、浮気性の夫のせいで精神が不安定な妻は車で走行中、まんまるのUFOに遭遇して、まぁいろいろあってでっかくなった妻は屋根を壊したり浮気相手と夫を殺したりして、やっぱり不倫とか不貞はいけないね、っていう映画です。
 原題は『50フィートの女の襲撃』でポスター(DVDジャケ)は上記の通りだがこんなシーンは1秒も出てこない。マジで皆無。というか田舎町なのでこういうハイウェイすら出てこない。それ以前に特撮ミニチュアは屋根と宿屋と酒場、巨人の手は作り物丸出しで子供がボール紙で作ったくらいの質感。そもそも女がでっかくなった姿を見せるのはラスト10分で、合成がお安いのでUFOの巨人も巨大女も半透明である。
 そして65分の本編中、巨人とか巨大女が暴れるのはそうだな、甘く見積もって15分ですよ。壊すのは田舎町の家3つと車くらいだし。宇宙巨人が車を持ち上げる時は映像自体がヨイショッ!とスクリーンから上に動くという省エネぶりを観たときは目を疑いました。
 あとは「ヒスったこいつを消せば財産が手に入って愛人ともくっつけるぜグフフ」という夫の策略とかそういうドラマ。観た俺が悪いとしても、それにしたってこれはどうでしょうかね? 『ゴジラ』の4年後なのにこの特撮感のなさ、ワンダーのなさはちょっと筆舌に尽くしがたいものがある。何とかならんかったのか。
 ただし良いところが何もないかというと、まぁないと言えばないんですが、まずUFO(原語だと「衛星」)の造形が白くてまんまるってのがよかった。これが空からぷわーっと浮いてきて、荒野の真ん中にぽつんと存在する。この合成とか、異様な雰囲気はかなりよかったと思う。それにオーラスで、ちゃんと巨大妻と普通の人間のスケール感を見せたあたりはね、ちゃんとやったな、と。
 あとはちょいとした台詞とか。「奥さんのこと、始末つけないの?」「……明日の朝刊を見ておけ」→「朝刊、見たわよ?(何も載ってなかったけど?)」とか。小粋さを感じましたね。あとはそうだな……まぁ……特にないかな……。
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