KnightsofOdessa

山中傳奇のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

山中傳奇(1979年製作の映画)
4.5
[オムマニペメフム!写経を巡る"極めて映画的な"妖術戦争!] 90点

まずこの素晴らしい映画に入っているお客が私含めて五人だったのは全くもって嘆かわしい。キン・フーはこの映画のために武侠映画で技術を磨いたのではないかと思えるほど素晴らしかった。武侠映画における緩→物語と急→アクションが、本作品においては緩→物語と急→ミステリーに置き換わり、観客のテンションをギリギリの場所で持続し続ける。依雲の登場から物語は加速度的に面白味を増し、写経を巡る妖術戦争が本格的に幕を開ける。しかし「大酔侠」のような直接的な力を使うわけではなく、太鼓やシンバルのある程度指向性をもった音波或いは大量の煙(イメージカラー付き)を発生させる爆弾的アイテムを駆使した極めて映画的な戦争なのである。「侠女」に始まるキン・フーの黄金期=70年代を締め括るには十分過ぎるし、キャリアベストとしても差し支えないだろう。

シルヴィア・チャンが可愛すぎる。「侠女」の唯一の不満点である"ヒロインがシュー・フォン"問題は完全解決され、雲青が全員を退場させるパワーワークの後、残された彼と観客は依雲の面影を永遠に探し求めるのだ。

ちなみに表題の"オムマニペメフム"だが、仏教の六字大明呪と呼ばれる六つの真言を表した言葉であり、劇中何度か唱えられている。
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