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太陽と月に背いてのtakのレビュー・感想・評価

太陽と月に背いて(1995年製作の映画)
3.6
秀作「ギルバート・グレイプ」を観て、まだ10代だったレオナルド・ディカプリオってすげえ役者だなと思った。その難役でアカデミー賞ノミネート。メディアでも彼を取り上げる記事が増えていた。中には"ジェームズ・ディーンの再来!"という使い古された文句まであったが(呆)。どこがだよ。それが「タイタニック」で一躍アイドル視されてしまった。壮大な映像技術のせいなのか、共演女優の圧倒的な存在感のせいなのか、彼の演技が他の作品よりもすごいとは決して思えなかった。

一方、その時期の出演作である「太陽と月に背いて」での彼は圧巻だった。詩人アルチュール・ランボーの半生を演じるのだが、ランボーがいかに奔放で、カリスマ性があって、同性をも魅了する人物だったのかを見事に表現している。その年頃でないと演じられない役柄にキャスティングが成功したと思える。

彼に振り回される詩人ヴェルレーヌを演じたデビッド・シュリース。二人で酒場で会話するシーンは特に印象的だ。酔態をさらしながらも「愛していると言ってくれ」とからむシュリース。酔っ払いの言葉に嘘はない。心にあるものを全て吐き出してしまうものだ。その言葉に真顔で答えたかと思うと、次の瞬間には彼をもて遊び始める。続くナイフの場面の衝撃😱。映画後半、同じ酒場でシュリースがそれを思い出す場面もいい。

ヴェルレーヌがとにかくいけ好かない奴で、美少年ランボーに溺れながらも、「妻の身体を愛している」と言い放つ。キーッ😖許せん。妻マチルダを演じているのが、僕のお気に入りロマーヌ・ボーランジェだからますます許せん。久々に帰宅したヴェルレーヌが妻を抱く場面とか、嫉妬と苛立ちが一緒になって…(落ち着け、オレ)。この映画のロマーヌ、とにかく美しい。

晩年のシーンでは当世風美少年ディカプリオをメイクで老けさせた。ちょっと無理を感じたけれど、病床の場面など堂々とした演技。ルックスだけじゃない役者だと改めて思った。今後は顔見せ映画みたいな出演作が多くならなきゃいいなと、これを観ながら思った。

映画の素晴らしいところは、その撮影時の俳優の姿を見られることだ、と言った方がいる。当たり前のことだけど、それは記録という意味だけじゃない。難病に苦しめられる前のクリストファー・リーブを、ビョルン・アンドレセンの「ベニスに死す」での輝きを収めた映像。それは貴重な瞬間だ。そして世間が美少年と称えたその瞬間のディカプリオを、「太陽と月に背いて」というフィルムに刻み込んだこともその一つ。あ、もちろんロマーヌの美しさもだけどさ。
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