Keigo

ある映画監督の生涯のKeigoのレビュー・感想・評価

ある映画監督の生涯(1975年製作の映画)
3.6
溝口健二の『西鶴一代女』のコメント欄にてフォロワー様から教えていただいた、溝口健二についてのインタビューベースのドキュメンタリー映画。

溝口作品はまだ三作品程度しか観れていないが順調にその魅力の虜になりつつあるので、150分となかなかに骨太の作品であるにも関わらず、最後まで飽きることなく興味深く観ることが出来た。

田中絹代や山田五十鈴など自分が観た作品の出演者はもちろん、宮川一夫など自分でも名前を知っているぐらいの著名な映画人も出演していたぐらいなので、自分が勉強不足なだけで錚々たる面子が集められていたんだろう。それぞれのインタビューの内容から、溝口健二という人のイメージの輪郭が浮かび上がってくる。その人となりは作品から受ける印象通りの部分もあれば、意外な印象を受ける部分もあってとても興味深い。

これまでの溝口健二のイメージといえば、完璧主義者の孤高の芸術家というようなソリッドな印象だったけど、今作を観て不器用で多少周りに煙たがられながらもその才能には絶大な信頼がおかれていて、なんだかんだ皆に愛されていたという、より人間らしい柔和なイメージに変わった。

加えて、改めてインタビューを撮影するということについても思うことがあった。インタビューの内容を単純な情報として捉えた場合、話者が口にしたことを文字にしてしまえば代替可能のような気がするけれど、実はその話し方や抑揚、表情や間合いなどからも感じ取れる部分は大いにあって、今作では終盤田中絹代が溝口健二との関係について語る場面において特にそう感じた。彼女が言葉にしたこと以外にも、汲み取れることがあったような気がするから。それはあくまでも主観的なものではあるけれど。

そういう意味では単に文字だけではなく映像として遺されている本作は、日本映画史における史料価値も高いのではないかと感じた。


(毎度のことながら、ドキュメンタリー作品をその他フィクション作品と並列にしてスコアを付けるのは難しい。)

GEOレンタル 11/18
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