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シャインのprasticのレビュー・感想・評価

シャイン(1996年製作の映画)
5.0
「こころの病を描いた映画は数多いが、残念なことに、統合失調症の患者が冷酷な殺人を犯すといった具合に、社会の偏見を助長するようなものが少なくないことも現実である。しかし、なかには作品としても上質な映画もある。」
『標準精神医学 第7版』(医学書員、2020年、p333)


医学書のなかで、統合失調症者の様子が丁寧に描かれている映画として、『シャイン』が紹介されていたので、観てみた。
実在のオーストリア人のピアニストのデイヴィッド・ヘルフゴット(ジェフリー・ラッシュ)の人生を元にした映画。
「独語が延々と続き、一つひとつの言葉に関連が乏しく、ほとんど意味をなさない。」

自己愛の強い父親に反発して家を出たのに、遠くの地でも父の願いを叶えようとして自ら心を壊していくデイヴィッドの姿と、それに反比例するように訪れる美しい旋律が、観ていてとても切なく、尊かった。
周囲の反応の描き方もすごいと思った。デイヴィッドをわかりやすく敬遠するのではなくて、優しく対応しながら、微妙に戸惑っているような、それでも普通に接しているような、、色々入り混じりながらもデイヴィッドに対して愛情深く接していることがわかる。そういう描写の仕方がリアルだと思った。

嫌なことがあって精神病を発病して悲しい末路を辿る、というような記号化されたシナリオよりも、こんなふうに温かい感情になれる物語がやっぱり好きだな、、
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