菩薩

あなたの目になりたいの菩薩のレビュー・感想・評価

あなたの目になりたい(1943年製作の映画)
4.2
俺の不幸は俺だけの物だと、分かち合いを拒んだ事がある。若き君にはこの苦悩は分かるまいと、何も言わずに立ち去った事がある。君が楽になるならば僕は悪人にでもなろうと、無理して嘘を付いて突き放した事がある。貴方は優しすぎると目の前から立ち去られた事もあるが、今思えばあれは、貴方は身勝手過ぎるという感情の裏返しだったのかもしれない。依存と共存の境目は難しいが、どちらが良い・悪いと言うものでも無いだろう。「あなたの目になりたい」は優しさであり厳しさでもあり、救いであり侵略でもあるのかもしれないが、闇に包まれればそこを光で照らし、共に過ごす未来の時間を思い描き、病めるときも健やかなる時も、すいも甘いもかき分け、希望も絶望も引っ括めて、そうやって二人の理想像を築き上げていくと言うのが、どうやら本当の愛という奴らしい。ラスト30分あたりでギアが上がり、ラスト10分でもう一段階加速し、見事なまでに感動のゴールテープに向かって疾走を続ける。ドイツ占領下、光を無くしたフランスのその足元をそっと照らし、未来へ向けての道筋を明るく示し、その手に再び選択肢を与えたこの作品は、まさに希望そのものだったのではないだろうか。
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