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ソイレント・グリーンのlamのレビュー・感想・評価

ソイレント・グリーン(1973年製作の映画)
4.0
暗澹たる空想科学とフィルム・ノワールに隠れたカニバリズム映画。と端的に言ってみる。

家を一歩出ると、階段を寝床にしている人がうじゃうじゃいて、そこには足の踏み場もない。どこに逃げても常に窮屈な思いをしなくちゃなんない。逃げても逃げても、誰かがいて、虫ケラ同然に人間が殺されるカオス。見ているだけなのに、窮屈さで苦しい。

生野菜や肉は人生で一度も食えないのが当たり前で、なんの楽しみもない、夢もない管理社会で徹底的に人間がコケ扱いされる。

ハードボイルドな殺人課のソーンはまさに70‘sのステレオタイプ的刑事で、舞い込んだ仕事をこなしていると、世界のカラクリに気づき始める。世界政府的な存在が見え隠れするうちに、気が狂ってしまうので、ハラハラする。

上流階級の秘密を探る懐古的なフィルム・ノワール映画のおもろさとSFの掛け合わせと言えば、『アルファヴィル』(‘65)と『ブレードランナー』('82)で、この映画は、そんな2作を繋ぐ過渡期的な映画なのかもと思う。

上流階級アパート備え付きの女性である”家具”とのメロドラマ的な要素やぎこちないアクションシーンは、若干スタイリッシュさに欠けるけど、強靭なモチーフがボトムを支えて、ブレが少ない良い映画。
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