maverick

スケバン刑事 風間三姉妹の逆襲のmaverickのレビュー・感想・評価

3.3
3代目麻宮サキが主人公のテレビドラマ『スケバン刑事III 少女忍法帖伝奇』の劇場版。本編終了後の1988年2月11日に劇場公開された。


主演は浅香唯、大西結花、中村由真。浅香唯が3代目スケバン刑事の風間唯を。大西結花が折鶴を武器に戦う風間結花。中村由真がリリアン棒を武器にする風間由真を演じる。末妹の唯、次女の由真、長女の結花の三人で風間三姉妹。ドラマ版でも重要だった姉妹の絆は本作にも盛り込まれている。

南野陽子主演の『スケバン刑事II 少女鉄仮面伝説』の劇場版と比べ、こちらは残念な出来でがっかりだった。アクションの規模やスケールに関してはこちらもなかなかのもの。コダックの飛行船を使ったり、海上でボートに引きずられるスタントシーンなど、今の日本じゃ絶対出来ないような撮影には驚きがある。だがそれ以外の魅力が薄い。ストーリーも面白味がないし、アクションの見せ方にもキレがない。風間三姉妹を主軸に置いた話としてもパッとせず、彼女らの魅力を十分に活かせていない。オマケで作りました程度の劇場版に成り下がってしまっている。

シリーズ3作目であるドラマ『スケバン刑事III 少女忍法帖伝奇』は、原作から大きく外れたオリジナル要素で構成された。180年に一度現れる陰星と共に現れた忍者集団「陰」と戦うことを宿命付けられた、風魔忍者の末裔である少女らの物語。より特撮色の強くなったこの路線変更は視聴者からは好評で、平均視聴率13.98%、最高視聴率21.3%の人気を誇った。だがこの改変は原作者を大いに怒らせてしまう。それに配慮し、原作要素に限りなく寄せて作られたのがこの劇場版。学生刑事同士の対決、学園の陰謀などに重きを置いた。だが本編とは毛色が異なり、そのため風間三姉妹のキャラクター性も損なわれてしまっているというわけだ。原作に寄せたからといって、それが必ずしも面白いとは限らない。前回の劇場版は原作の良さを活かしたからこその面白さ。でも本作に関しては原作寄りが逆にあだとなってしまった。映像化には映像化なりの良さもあり、そのさじ加減が大切だということだ。

本作の敵のボスを演じるのは京本政樹。いやはや美しい。少女漫画から飛び出してきたかのようなルックスに驚愕する。サキのライバルとして登場する学生刑事役の藤代美奈子は演技が上手かった。その他の共演者に豊原功輔。まだ端役で、本名の岩城正剛として出演している椎名桔平の姿も。こういう楽しみもあるのが懐かし映画の醍醐味だ。

主人公の浅香唯は、めちゃめちゃ可愛い。初代の斉藤由貴、2代目の南野陽子と違い、天真爛漫で元気いっぱいなキャラクターが際立っている。頭を思いっきり撫でたくなる可愛らしさ。「わちが」とか「せからしか」といった3代目特有の方言萌えも良き。妹系の可愛さに溢れている。それでいてアクションシーンになると顔つきが変わって途端に凛々しくなる。ヨーヨーを構える仕草が様になっていてかっこいい。3代目は手甲にあててヨーヨーを飛ばすんだよね。『スケバン刑事』のこうしたヨーヨーの攻撃の描写って、MCUのキャプテンアメリカの盾の使い方と通じるものがある。演出の上手さが神がかっているのだ。ただ本作に関しては、そのかっこよさを最大限活かせてないのが残念。前回の劇場版の演出は凄く良かったのに。結花、由真との共闘の見せ方とかにもこだわってほしかったな。


シリーズの4作目以降も製作が決まっていたのに、そのプロジェクトは頓挫してしまう。本作にもそうした大人の事情が見え隠れし、何だか中途半端な出来となってしまっている。宇宙刑事シリーズと同様に、スケバン刑事シリーズも三部作で幕を下ろすこととなった。後に松浦亜弥主演の4代目スケバン刑事が作られるわけだが、それはまた別のお話。上手くやっていれば、戦隊ものや仮面ライダーみたいに今も続くシリーズものになっていたかも。『スーパー戦隊VS仮面ライダーVSスケバン刑事』とか作られていたのかもしれないな。
maverick

maverick