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哀れなるものたちのmaverickのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.7
2023年公開のイギリス・アメリカ・アイルランド合作映画。『女王陛下のお気に入り』のヨルゴス・ランティモス監督とエマ・ストーンが再びタッグを組み、第96回アカデミー賞において主演女優賞など計4部門で受賞を果たした。


ヨルゴス・ランティモス監督の優れた才能を感じさせる圧巻の作品であり、第96回アカデミー賞で『オッペンハイマー』に次いで11部門でノミネートという快挙も納得してしまう。本作で二度目の主演女優賞受賞を成し遂げたエマ・ストーンの演技も圧倒的。作品の内容的にはかなりぶっ飛んでいるが、それに感嘆させられるのも彼女の説得力のある演技があればこそ。彼女が演じたベラという一人の女性を通して、様々なことを考えさせられる。エロ、グロ過多ではあるものの、それでも知的で芸術的だと痛感させられる見事な作品だ。

主人公のベラは知能が未発達な女性で、最初は赤ん坊とほぼ同等。だが驚くべきスピードで知識を得てゆき、純粋であるがゆえにあらゆることに興味を示す。性に関しても直接的で、常識とか倫理観がないベラの言動は全てがおかしい。だが純粋だからこそ気付かされることもある。間違っていると思っていたベラの言動にも次第に説得力が生じるのが面白い。彼女から矛盾を指摘されるなど、周りの大人たちの方が間違っていると感じることばかり。ベラが知りたいと渇望した世界は『哀れなるものたち』で溢れた世界であったのだ。

赤ん坊から知性を感じさせる大人の女性までをも、内面の変化だけで表現したエマ・ストーン。文字通りの体を張った熱演ぶりが凄まじい。そりゃあ主演女優賞獲るでしょう。『ナイアド 〜その決意は海を越える〜』 のアネット・ベニングも素晴らしかったが、軍配はこちらに上がるなと。助演男優賞にノミネートしたマーク・ラファロの演技も狂気じみていて見事。ウィレム・デフォーの存在感もさすがであった。


人間は哀れなもの。だがそれでも素晴らしいと思える部分がある。それらを際立たせて見せる本作が自分は大好きだ。
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