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女ひとり大地を行くのmhのレビュー・感想・評価

女ひとり大地を行く(1953年製作の映画)
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1932-1952年の20年間を生きた働く女性の話。
独立プロ作品で、炭鉱労働者のカンパで作られた映画なので、内容はある程度予測できる。そして、その期待を裏切らない展開となっている。
昭和恐慌の頃の東北の農村。「娘を売るならお知らせください」立て看板にあるのは役所からの注意喚起ではなく、中間ブローカーの広告。金貸しと、口入れ屋が結託して、娘を売らせるシステムを巧みに描いている。
実入りの良い炭鉱夫となったあとも、近所の助け合い、戦争中の徴兵、中国人韓国人の徴用工、などいちいちプロットが面白い。
作中にあった張り紙を抜書き。


朝鮮動乱の為 衛生材料が不足しておりますから
お互に節約するよう注意してください
北洋炭鉱病院 外科室長

ずいぶんてきとうな医者もリアルだけど、夕張の炭鉱住宅をはじめ、坑内の様子など、すべて本物を使って撮影しているので、資料的価値も高い。
死んだと思っていた亭主が、中国→シベリアと流れてエリート共産党員となって戻ってきた終盤はもう、とんでもなく赤一色になってしまった。
赤旗を掲げて、歌を歌いながら、ぼた山に登る労働者たちの列でエンド。
労働運動が題材の映画の締めくくり方はだいたいこれっすね。
長男をクズにしてあるのがいいアクセントになっていた。父親が不在で、母親が働き詰めだったからグレたとかそういう描写はなし。面白いのは、そんな長男が予備隊(できたばかりの警察予備隊のこと)に入ること。
警察予備隊のネガキャンを日本共産党が先陣きってやってたことはググるといっぱい出てくる。
予備隊だけならまだしも、女のヒモで、金のために弟を売る密告者。
共産党員として正しい弟と対比させるための設定だとしても、ずいぶん、ごてごてといろんなことやらされてる。
米軍に接収されて、予備隊が設置された千歳基地の様子がこれまた眼福だった。
黄金期の夕張の様子、公開当時の最新の炭坑設備なども見逃せない。
ソ連帰りの共産党員にして、名映画監督亀井文夫が手掛けた最後の長編映画とのこと。モンタージュとかそういう見るからにテクニカルなシーンがないのが逆にさすがだと思った。
面白かった。
mh

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