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マッチ工場の少女のandesのレビュー・感想・評価

マッチ工場の少女(1990年製作の映画)
3.9
なんとも強烈な映画。冒頭3分ほど、ひたすらマッチ工場の製造ラインが映る。黙々と続く流れ作業、20分ほど台詞がない。そして、イリスが給料でこっそりドレスを買ったことが両親(仮)にバレる。初めての台詞が「売春婦め」、強烈である。
ほとんど台詞がないかわりに、数少ない台詞がキツ過ぎる。カウリスマキとしては異色作。ただ、音楽の使い方と不思議と重くなりすぎない作風はならでは。
イリスを含め登場人物がほぼ仏頂面。それだけに、映画を見てボロ泣きするシーンには驚いた(反面、辛い現状ではほとんど表情を崩さない)。イリスの根底には貧困があるが、金持ちの男も含めて登場人物全員が幸せには見えない。
面白いと思ったのは復讐劇ながら「殺人」を犯したかどうかは分からない。そもそも殺鼠剤を薄めた程度で殺せるものなのか。描かれていないので実は不明確なのである。
さて、マッチ工場の流れ作業のような人生は、「贖罪」という形で不意に終わる。罪を犯すとことにより、最悪な日常より開放される。工場作業から始まり、業務を止めるショットでこの映画は終わるのである。なんとなく、メルヴィルやブレッソンのようなフランス映画の感触がある。
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