カタパルトスープレックス

素晴らしき放浪者のカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

素晴らしき放浪者(1932年製作の映画)
3.5
一般的に「ルノワール」といえば印象派の画家ですが、映画好きにとってはその息子のジャン・ルノワールなのです。そんなルノワールの初期作品の一つです。ヒッピーの原型とも言えるし、アメリカン・ニュー・シネマ的なアンチヒーローの原型ともいえます。

ストーリーを簡単にいえば浮浪者とブルジョワの邂逅です。川の流れに身を任せた浮浪者ブーデュ(ミシェル・シモン)をブルジョワな書店な店主レスタンゴワが拾い上げる(レスタンゴワ的には不幸なブーデュ救い出したと)。しかし、自然に反して一箇所に留めるのですから、不協和音がギシギシと音を立てて日常生活に支障をきたしていきます。さて、どうなることやら……という話です。

なんとも度し難い作品。まず、前半だけでいえば★2です。ブーデュの行動があまりにも野蛮で、見るに耐えません。そうなった原因はもちろんレスタンゴワにあり、自業自得ではあるのですが。それでもですよ。やはり、見ていて不快ではあります。それ、わざとやってるよね?

しかし、後半は★4なんですよ。これが原作のままのエンディングだったらくだらない映画になっていたと思います。しかし、ルノワール独自のエンディングによって作品としてより高みへ昇華されたと思います。このラストだからこそ、野蛮人とブルジュアの衝突が正当化されると思うんですよね。つまり、前半の★2に値する不快感に意味があったことがわかる。

まあ、それでも90年近く前のフランス人の感覚と現代の日本人であるボクらが同じ感覚を持てるはずもなく(IMDBによれば当時のフランス人もかなりの不快感を持って本作を迎えたようですが)。人を選ぶ映画だと思うので、万人にはオススメできないですね。