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ハンバーガー・ヒルのsymaxのレビュー・感想・評価

ハンバーガー・ヒル(1987年製作の映画)
3.8
1969年5月10日、米軍第101空挺師団は、南ベトナムの"エイショウ・バレー"で、957高地を占拠するべく、"アパッチ・スノー"作戦を開始する…熾烈な戦いは続き、いつしか兵士達は、957高地のことをこう呼ぶようになるのです…"ハンバーガー・ヒル"…

実に34年ぶりの劇場再上映、勿論、初公開時も劇場で鑑賞しております。

今作の公開は1987年ですが、86年から90年に掛けて、"プラトーン"や"フルメタル・ジャケット"の他、"カジュアリティーズ"、"グッドモーニング・ベトナム"、"7月4日に生まれて"といったベトナムを舞台にした作品や"ジェイコブス・ラダー"のようなベトナム戦争を題材とした作品等、数多く公開されています。

私の記憶では、ジョン・ウェインが出演した"グリーン・ベレー"がベトナム戦争を大々的に扱った映画の最初のような気がしますが、まぁ、"グリーン・ベレー"は、戦争高揚映画ではありますが、その後、"地獄の黙示録"や"ディア・ハンター"といった戦争の狂気を体現するかのような作品を経て、当時のアメリカ社会の風潮をバックに"ランボー"や"地獄のヒーロー"、"エクスターミネーター"といったアクションやホラー作品もベトナム戦争の影響により生み出されました。

ですが何の作品も感覚的には"外から見たベトナム戦争"のような気がします。

それを一変させたのが、オリバー・ストーンの"プラトーン"…実際にベトナムの戦場で戦った者達が、映画という手段を使って声を上げるようになったのだと思います。

"プラトーン"以前と以後では、ベトナム戦争での戦場の描き方は、全く異なります。

"プラトーン"は、戦場のリアルさは過去作に比べると格段に違いますが、アカデミー作品賞をとったことからも、ストーリーやテーマがエンタメとして洗練されており、"ベトナム戦争モノ"として別格の存在。

それに比べると、本作のストーリーは、"957高地を占領する"ことのみ。

後は…撃って、撃って、休んで、撃って、休んで、撃って、休んで、撃って、撃って…
のひたすら繰り返し…

兵士達同士の会話に、当時のアメリカ社会がベトナム戦争をどう捉えていたのかが垣間見ることは出来ますが、ひたすらオチのない話が続いたかと思えば、さっきまでバカ話をしていた戦友が肉片となる姿を目の前で見せられる…戦場に漂う絶望感は半端なく、本当にリアルなベトナム戦争の戦場を見せる傑作の一本だと思いますし、ベトナム戦争モノ作品の中でもかなり好きな作品です。

ドン・チードル出てたんですね、全然知りませんでした。

初公開当時も34年経った今でも、それ程ビックスターが出演している訳ではないので、地味な印象が強く、誰が誰だか分かりにくい上に、バタバタと倒れて行くので、戦場ドキュメンタリー的にも見え、その点でもリアルな戦場を追体験しているような錯覚に陥ります。

今作を鑑賞すると思い出すのが、"映画で見るベトナム戦争がアメリカ社会に与えた影響"と題して、年表等の資料と発表する論文を書いた中学1年の夏休みの自由研究…一夏かけて作った大作で、意気揚々と全校生徒の前で研究結果を発表しましたが、先生も生徒も引く引く…笑

まぁ、変わった子だったんですね…
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