Maoryu002

霧の中の風景のMaoryu002のレビュー・感想・評価

霧の中の風景(1988年製作の映画)
4.0
アテネに住む12歳のヴーラ(タニア・パライオログウ)と5歳のアレクサンドロス(ミカリス・ゼーケ)の姉弟は、ドイツにいると聞かされている顔も知らない父親に会いに汽車に乗る。途中、旅芸人に出会い、ヒッチハイクを繰り返し、2人は長い旅の中で様々な経験をする。

初のテオ・アンゲロプロス監督作品。
心温まるロードムービーを期待してると、裏切られるどころか全く楽しめないであろう作品だ。

前半は姉弟の無謀な冒険、答え探しのロードムービーなんだけど、途中から完全におとぎ話になって、ヴィットリオ・デ・シーカ監督の「ミラノの奇蹟」に近い印象だった。

ただ、ヴーラの悲惨な体験以降の後半は全員が悲壮感を抱えて、救いのない旅が続く。
これは子供たちの成長の物語ではあるものの、姉弟が求めていたものは何だったのか、何が2人をあそこまで動かしたのかは謎だ。
カモメさん、雪、花嫁、死にかけの馬、手の巨像という象徴的映像も謎だらけ。やはりギリシャという国や時代背景を掘り下げないと理解は難しいのか。

それでも、動きが少なく奥行きがある超長回しの映像は飽きることがなく、深ーく引きずり込まれたし、ラストはまさに幻想の世界。霧の中に見えたのは父親ではなく一本の木。
今まで観た中でも、最も残酷な寓話かもしれない。
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