マグルの血

ゴーストワールドのマグルの血のレビュー・感想・評価

ゴーストワールド(2001年製作の映画)
3.8
モラトリアムから脱却できない少女の喪失。

満を持してミニシアターデビュー。地元に昔からあった映画館、知ってたけど足を運んだことはなかったんですが、同僚からの猛プッシュもあり行ってみました。

チケットを買って時間があったので近場のカフェへ。なるほど、これが大人の休日かとコーヒーを味わいつつ開演を待つこの時間もなんだか心地よいものですね。
ちなみにこのあとは「ボーはおそれている」をレイトショーで鑑賞予定。うってかわって大きな映画館での鑑賞なのでギャップ感じるのも楽しみのひとつ。たまにはこんな休日もいいですよね。

で、映画の感想です。とてもポップな作風、それこそブックスマートやレディバードのような作品を期待していたら思ったよりシリアスな作品。いや、ファッション性も高いし、青春ムービー感はもちろんあるんですが、主人公の心情は結構ヘビー。

高校を卒業したイーニドとレベッカは斜に構えた世の中なめ腐ってる系こじらせ女子。
出会い系広告でイタズラした男性シーモアとの出会いでイーニドの生活に少しずつ変化が生じる。

結局まあ社会に迎合できなかったこじらせ女子の行く末を描いた作品なんですが、政治的でないポリティカルな内面や人間関係に悩む女性のシリアスな内面をうまく表現し何気にメッセージ性のある作品だなという印象。

美術の補講が終わらなければ卒業できないというイーニドの設定が、さりげない承認欲求と挫折をうまく導いていてそれがしっかり効いている感じも良かった。

アメリカンビューティーの衝撃が忘れられないソーラ·バーチと若かりし頃のスカヨハの拙いながら等身大な演技がティーンムービーっぽさ全開で好印象。大好きスティーブ·ブシェミの絶妙な陰キャ具合もグッド。

劇中歌も心地よいナンバーが多いなかなかお洒落な映画。21世紀の幕開けを代表する青春ムービーがこんなダウナーって(笑)思春期のモラトリアムを生きる若者の共感を呼ぶ内容って感じだけど、結構世代問わず共感してしまう部分は多いのでは。



全て鑑賞した後にタイトルの意味を考察したくなる感じ、渋いですね。あと、ジャケットなんかの前情報からいい意味で裏切られる感じはナポレオンダイナマイトとか近いかも。

それと、なんとなく邦画っぽさを感じてしまったのは私だけでしょうか?カメラワークやストーリーのテーマや展開のせいかな。それこそモダンな邦画、何に似てるとかはないんですけど。結構影響受けてる人いそうな気がする。調べてみます。

追記
どっちかっていうとマンガ界の方が影響力強そう。原作調べたら作画がカネコアツシとか望月ミネタロウっぽくてとても読みたくなった!

2024年 19本目
マグルの血

マグルの血