教授

彼女について私が知っている二、三の事柄の教授のレビュー・感想・評価

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段々と難解になっていく時期のゴダール。
しかしながら、ある程度慣れてもきていて、昔だったら5分で眠りについていた自分にもある程度は何を語ろうとしているかは見えてきた気がする。

1966年当時、激化し始めたベトナム戦争を通じて「アメリカの正義」の暴走と、背景にある「資本主義」との結託による「グローバリズム」への嫌悪と批判。
消費経済による文化芸術への堕落への批判。
恐らく10年程度前なら、実感の伴わなかったような「左翼的」なメッセージが、2023年時点で、ここまで世界が荒廃し、何より人心が荒廃した時代に生きていると、その先見性と普遍性の真っ当さに驚く。

本作はドキュメンタリー的な要素と、ストーリーの劇映画としての要素と、何より私小説的なルポルタージュ的な要素とがシームレスに混在していて情報量が多い。
特にフランス語のわからない日本人としては、字幕を追っていると映像の細かな意図まで追いつかない。
朧げに感じるイメージから湧く印象を積み重ねていくと、最後に答えを用意している、というような驚きのある構成もあり、なかなか楽しめる部分もある。

ただ、その印象は強くあれど、ひとつひとつのシーンをまるで覚えていないのは、字幕ばっかり追っていたからだ。
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