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ざくろの色のmimicotのレビュー・感想・評価

ざくろの色(1971年製作の映画)
5.0
18世紀、アルメニアの吟遊詩人「サヤト・ノヴァ」の生涯を描いた、夢幻的で儚くも美しい、美しい芸術作品

吹き込む風にめくられる
雨に濡れた大量の羊皮紙の書物と
日向ぼっこしている少年
その構図に心を奪われた
台詞無しで
"文学が好き"って、こんな表現の仕方
素敵すぎる

これは詩世界を独特な感性で映像化した
目で見る詩
一つ一つのショットが静止画的で
絵画のような、舞台のような、
映像が次々に現れては消えてゆく
ウトウトと絢爛な美術の夢を見てるように

ザクロから流れ出る果汁が
血のように滲んでゆく
生と死を表すような赤が印象に残る
雨水が壁に流れ落ちる 色水が糸を染める
水の演出が美しく音が心地よい
タルコフスキーを思い出すと思ったら
ふたりは親友だった

絢爛な色彩に包まれて
水の音 風の音 糸車の音
聴きなれない民族音楽らが
台詞代わりに、言葉のように語りかけてくる

軟禁生活を強いられたパラジャーノフ監督の
人生と相まって切なく美しく心に響く
究極の美の世界でした
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