ストレンジラヴ

パピヨンのストレンジラヴのレビュー・感想・評価

パピヨン(1973年製作の映画)
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「バカ野郎、俺は生きてるぞ」

ちょっともう、何からコメントしていいか分からない。
とにかく人間を人間と見ず、極限まで凄惨な状況に追い込んだような作品で、少なくとも「大脱走」や「タワーリング・インフェルノ」のような高揚感の伴う緊張とはまるで毛色が違った。ギロチンの場面で「うわぁ…」となり、独房の時点で観ている僕も生気を半ば失っていた。この後夕飯なんですけど...。
四方を潮流と鮫に囲まれた絶海の孤島"悪魔島"に収容された男たちの執念の脱出劇を描いた本作だが、他の脱獄モノと比較すると思ったより脱出にウエイトを置いていない感じがする。少し時間の経過が分かりづらいのと、終始画面が汚いのでかなり神経をすり減らす150分だったことはここに記しておく。
そして考えに考え抜いた"パピヨン"(演:スティーヴ・マックイーン)の脱出方法が思いのほかシンプルで拍子抜けしてしまった。いや、実行するとなると並々ならぬ胆力と体力が必要で、方法自体も謂わば観察眼の勝利と言える代物なのだが、「それでいいんかい?」というのが本音だった。制度上の問題で「やるか、やらないか」だけが重要だったので、そこまで緻密に計画を立てる必要がなかったとはいえ、もっと巧妙に組まれた作戦を予想していただけに驚いた。
面白いには面白いが、もっと刺さるかと思っていただけに意外にも受け流してしまったなという印象の本作。描写があまりにも悲惨で、本能がフィルターをかけてしまったせいなのか、あるいはフランス物なのに終始英語だったのがしっくりこなかったのか、それは自分でも分からない。