ストレンジラヴ

レオン 完全版のストレンジラヴのレビュー・感想・評価

レオン 完全版(1994年製作の映画)
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「根がないんだ、俺と同じさ」
「大地に植えれば根は張るものよ」

15年ほど前、WOWOW制作の番組「映画を観て旅に出た」という番組を観た。旅先はニューヨーク、案内人は濱田岳だった。ルーズヴェルト島に向かうロープウェイを目にした濱田が溢れ出る想いを語っていたのが本作だった。その中でも僕に鮮烈な印象を残したのがゲイリー・オールドマン扮するスタンであり、以来僕はガムを噛む際には虚空を仰ぎ、簾は掻き分けるように開くのが常となった。この男、とにかく何を考えているのか分からず恐ろしい。
同じく何を考えているか分からないが、こちらはどこか愛嬌のある男・レオン。口をぼんやりと開いている姿が印象的だが、一度銃を持てば俊敏そのもの。仕事に忠実な男を淡々と演じる。こういう無口な仕事人が僕はたまらなく好きだ。
ナタリー・ポートマンも素晴らしい。本当に頭の良さが光りますねこの人は。「タクシー・ドライバー」(1975)でジョディ・フォスターがセンセーショナルな出方をしたように、本作はナタリー・ポートマンだからこそこれほど印象的な作品に仕上がったのではないだろうか。
レオンがあまりにも淡々としているものだから、途中までは展開の割に起伏が感じられず今ひとつ刺さらなかったが、終盤に一気に引き込まれた。特に麻薬取締局の男子トイレの扉が閉じた場面では文字通り身の毛がよだつ思いをした。ラストシーンはこの物語の締めくくりとしてはこれ以外に考えられないというもので、「なるほど道理で名作な訳だ」と腹落ちしたものだ。
スティングの主題歌もいいけれど、個人的に気に入ったのは劇中で流れるボレロのような曲。それぞれの視線や目つきが感じられてとてもゾクゾクする。
番組を観てから15年、僕も歳をとった。だが大人になりきれていない。スコアを聴きながら自分だけの時間を持つことにしよう。