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アレキサンドリアWHY?のakrutmのレビュー・感想・評価

アレキサンドリアWHY?(1979年製作の映画)
4.0
第二次世界大戦中のアレキサンドリアを舞台に、映画や演劇に熱意を燃やす青年を描いた、ユーセフ・シャヒーン監督が自身をモデルとする自伝映画4部作の第1作目。

シャヒーン監督の故郷である、欧米的な雰囲気が漂う港町アレキサンドリア。地中海沿いの景色を映す冒頭のシーンは、まさにそんなエジプト第二の都市の雰囲気が感じられる。高校生のヤヒヤは、海岸にナンパしに行こうという友人たちの誘いを断って、映画館でアメリカ映画を鑑賞するほどの映画好き。高校で演劇を演出しながら自分でも出演するなど映画や演劇に没頭し、エンジニアになってほしいと願う父親を尻目に、演劇を学ぶためにアメリカに留学することを決意する。そんな青春物語が、戦争直前で浮足立つアレキサンドリアの市民たちとともに群像劇風に描かれる。

イギリスから独立したエジプトとは言え、当時はまだイギリスの影響下にあり、第二次世界大戦が始まってからはイギリス軍が駐留していた。映画では、ドイツ軍が侵攻してくる直前で、イギリスへの反感からドイツ軍を歓迎するとともに、戦闘が始まることへの不安も漂うアレキサンドリアの混沌とした状況を映すかのごとく、いくつかのサブプロットがバラバラに描かれる。チャーチルの暗殺を企てる反逆者たち。恋人の子供を身籠りながらも、ナチスの侵攻から逃れるために父親とともにアレキサンドリアを離れるユダヤ人の女性。若いイギリス兵士を誘拐して殺害しようとするゲイの男性。それらのサブプロット間の明確な関係性は描かれないが、敢えてそうすることによって、当時のアレキサンドリアの混沌とした状況が表現されている。ストーリー的なまとまりを気にせずに、映像にまかせて馴染みの薄いアレキサンドリアの雰囲気を楽しむことができれば、とても印象に残る作品である。続編も見てみたいけど、難しいかなあ。

主人公を差し置いてジャケ写で一番大きく写っているのは、なぜか子供を身籠るユダヤ人女性を演じるナグラ・ファトヒ。エジプトを代表する女優さんらしい。ヤヒヤの優しい母親役の Mohsena Tawfik がなぜかとても色っぽい。シャヒーン監督も最後のほうでカメオ出演している。
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