aya

海と毒薬のayaのレビュー・感想・評価

海と毒薬(1986年製作の映画)
1.5
神なき日本人、と言われてもピンとこない私はまごうことなき日本人なんでしょうね。
捕虜を人体実験できるのは神を信じていないから、と言われてもピンとこないんですから。
ただ、遠藤周作はだから日本人はダメとも、だから入信しましょう、とも言ってはいない。

人体実験に関しては、敗戦して裁判にかけられたからを明るみになった、としか思わないし、日本人に限らず人類がこれまでにしてきた非人道的行為はこんなものではないでしょう?
医者というのは、生と同時に「死」とも向き合わなければならず、私たち一般人には決して「言わない」現実を背負っている人たちだと思っている。
一般人である私たちは目を背けたい現実を医者に託し(押しつけ)、自分たちは「きれい」だと言い張る。

原作についてはさておき、映画としての感想を。
手術のシーンはグロだろうか。
内蔵や血を映しているから?
医療関係者が見たら「リアル」と言うだろうか。
言わないだろうなあ。

原作では事件後の勝呂から始まり、ひとりの人間をしっかり描いていてから本題の事件に入るが映画ではばっさりカットしている。
時間の制約もあるだろうが、私が映画を好んで見ない理由がモロに出た作品になっている。

そもそも、遠藤周作は「神なき日本人」を描きたくてこの作品を書いたのではないのではないだろうか。
描かれた時代が70年前だし、この映画が作られたのも30年前になる。
今の感覚で見てしまうといろいろ腑に落ちないのは仕方がないんだろう。
もっと「別の何を」伝えたかったのではないだろうか。
それをこれからずっと探ってきたい、そう思える映画ではあった。
aya

aya