見た目は美しいのだが毒を持っている薔薇のような登場人物が多々現れて、決してフィクションに収まることのない人の性というものをまじまじと見せられる。この情報社会で自分をブランディングする機会が増えたことで取り繕った人を目にすることは増えただろう。
一面的には語ることはできないキャラ造形により「人」が表れており、作中の中でも個人的に興味深いのはリックとフィッツの2人である。
✔️隣人の息子・リック
フィルターを通さなければ世界と接することができない。現実社会への恐怖、トラウマが根付いてしまっている。
✔️隣人の父親・フィッツ
戦争では英雄であったかもしれないが日常に戻ると自分の価値を失ったかと交錯する。規律に縛られており、枠組みを外れない"普通"であらなければならないと自らの首を絞めている。
ただ他者がその人の本質を憶測で判断しているのもまた事実であり、本音は自分しか気付けないものである。本作の解釈が多々あるのも人を理解する難しさに通ずる。
繕う事で自分を強く見せたり、本音を隠す事で自ら自分を殺したり、誰かに肯定してもらわなければ自分を保つことができないのが人であり、人の弱さともいえる。渦中の最中は心を蝕んでいるかもしれないが、崩壊や終焉が訪れた時に世界は想像以上に単純であり美しいことに気付く。