このレビューはネタバレを含みます
今もカリスマ的人気が絶えないキエシロフスキ監督の遺作。
同監督の「デカローグ」(1988)を観たので、内容が思い出せない本作を観直した。終盤のニュース映像のシーンだけ覚えていた。
覗き見が趣味の郵便局員を描いた「デカローグ 第六話~ある愛に関する物語」を翻案したような内容だった。驚いたのは音楽も「デカローグ」のテーマ曲を使っていること。
本作を好きな人には申し訳ないが、個人的には少し気持ち悪い映画だった。
電話盗聴が趣味の心を閉ざしたおじさんと若い女性モデルが出会う
→モデルが優しく諭しておじさんが更生
→おじさん「昨日君の夢を見た」と語り良いムードになる二人
→モデルは大きな海難事故の奇跡的な生存者となる
この過程に心情変化の描写があまり伴わないので何ともご都合主義に見えた。二回ほど偶然の”光”が二人を照らしたことがポジティブな運命を呼ぶのだが、これをロマンティックと受け取るかどうかで本作の評価が変わるのだと思う。自分には合わないし嫌悪感さえ抱いてしまった。
しかし忘れてならないのは、キエシロフスキ監督のこの作風が大きな支持を集めている事。新海誠監督の近作と通じるような”運命ロマン”の魅力は、好き嫌いに関わらず理解しておきたい。