櫻イミト

ファントマの櫻イミトのレビュー・感想・評価

ファントマ(1947年製作の映画)
3.0
伝説的な連続活劇サイレント映画「ファントマ」(1913~1914)のリブート続編。

数年前に死んだ大悪党ファントマの娘エレーヌ(シモーヌ・シニョレ)が記者ファンドールと結婚。しかし市長が殺され「結婚は成立していない」とのファントマのメッセージが現場に残されていた。さらに大臣のパーティに覆面姿のファントマが現れ「10億フランを寄こさなければ100万人のパリ市民を殺す」と脅迫し立ち去る。ジューヴ警部は捜査を開始するが、ファントマのアジトでは着々と殺人光線が開発されていた。。。

最初の活劇「ファントマ」は第一次世界大戦にルイ・フィヤード監督が徴兵され打ち切られた。そして第二次世界大戦直後に本作が公開、実に33年ぶりの復活となった。

しかし、当時のシュルレアリストたちが熱狂し多くの後進監督に影響を与えた旧作の面影は薄く、設定だけ引き継いだテレビ映画のような仕上がりだった。1947年の制作にしてはマイナスの意味で演出が古く感じられた。

本作を手がけたサシャ監督はこれがデビュー作とのこと。見るからに初心者の演出で、シナリオに合わせて役者たちを撮るばかりで殆どアップやインサートが入らない。前作の、映像で魅せるサイレント演出のイメージが頭にあるので、なおさらトーキー頼りの稚拙さが気になった。殺人に何の抵抗もないファントマの非情さも、トーキーで観ると棒演技のように感じてしまった。

シモーヌ・シニョレ(当時26歳)はまだ無名の時期で、本作は初めての主要キャストだったようだ。ファントマに対し最も反撃を見せる役どころで、後の大女優の駆け出し時代を観ることができる点では貴重な一本と言える。
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