櫻イミト

影なき淫獣の櫻イミトのレビュー・感想・評価

影なき淫獣(1973年製作の映画)
3.3
「血みどろの入江」(1971)と共にスラッシャーの先駆とされる女子大生ジャッロ。監督は数々の名作ジャッロを手掛けたセルジオ・マルチーノ。主演は「歓びの毒牙」(1970)のスージー・ケンドール。原題「Torso:トルソ(頭手足のない胴体部分のスケッチ用の像)」

1970年代初頭。イタリアの古都ペルージャの歴史ある美術大学。アメリカからの留学生ジェーン(スージー・ケンドール)は親友ダニエラから、つきまとってくる幼馴染の男ステファノの愚痴を聞かされていた。その夜、クラスメイトのカップルがドライブ中に目出し帽の男に惨殺された。現場に残されていたスカーフがステファノのものに似ていると気づいたダニエラは不安になり、ジェーンら女友達4人で叔父の持つ別荘へと遠出する。しかし魔の手は別荘へと忍び寄っていた。。。

ロケ地の風景に感動した「ナイトチャイルド」(1975)と同じくイタリアの古都ペルージャで前半が撮影されている。迷路のような古い町並みは本作でも素晴らしい。

物語は男女ともに登場人物が多すぎて取っ散らかった印象。フーダニット形式だが、怪しい男が次から次に出てきてキャラクターが描きこまれず、誰が犯人でもいいやと思ってしまった。一方、被害者となる女子大生たちもキャラの深堀りがされないため、危機が訪れてもあまり心配になれない。

最後に解き明かされる犯行動機は短い告白と回想インサートで済まされる。正直言って連続殺人の必然性が腑に落ちていないが、要は精神病オチなので仕方ない。

前半のロケーションの素晴らしさ、70年代初頭カウンターカルチャーのイタリアでの雰囲気、怖すぎないスラッシャー演出は良かったが、全体的にはイマイチだった。

若い女性が殺されるシーンが好きな人や、スラッシャーの歴史を学びたい人には向いているかもしれない。
櫻イミト

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