囚人13号

鉄路の白薔薇の囚人13号のレビュー・感想・評価

鉄路の白薔薇(1922年製作の映画)
4.0
これは全長版の方が遥かに素晴らしかったと思う。拾い子の娘へ男たちが群がる擬似近親相姦、しかし相関図は思いのほかミニマル。

氾濫する"円"のイメージは車輪の回転運動からアイリスと円形クロースアップ、多重露光で至るところへ転写されるイメージとして反復されるが無声映画なので驚くほど飽きねぇ。

シジフが失明してからアップの人物像が悉くソフトフォーカスになる(主観ショットではない)のも良いが一点、VHSでは氷山での名高いフラッシュバックが全カットされててブチ切れ案件。

そのフラッシュバックは文字通り事故というトラウマを蘇らせるし、加速モンタージュと共にここからエイゼンシュテインの映画理論へ繋がっていくルートは何となく納得。被写体をイメージ次元へ解体し、カットの加速に比例して速度そのものが演出を構成していく。

モンタージュと並行してブレーズ・サンドラールやエディプス、キプリングを字幕に引用する唐突さも一つ印象派映画の飛躍なのでは。
囚人13号

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