TAK44マグナム

フォレスト・ガンプ/一期一会のTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

3.6
過ぎ去った風景は生きた証。


公開当時に観に行って以来なので数十年ぶりに、他に予定があったのにテレビで放映していたのをついつい最後まで観賞してしまいました。

少し知能が低いけれど純真で何事にも真っ直ぐなアメリカ国民、フォレスト・ガンプの数奇な半生を描く、トム・ハンクスの代表作のひとつですね。
バリバリにアカデミー賞とりまくった作品ですし。


走るのが得意なフォレスト・ガンプは大学ではアメフト部のスターとなり、ベトナム戦争では大統領から勲章を贈られ、卓球の代表選手となり、エビ漁を始めると巨万の富を得ます。
まさしく超人的な活躍なのですが、まぁ流石にこんな人はいないでしょう。
ただ、何かを成した人には数奇な人生を歩んだ人も少なくないので、あながちすべてをファンタジーだと片付けてしまうのも些か乱暴といえます。

そんなフォレスト・ガンプが愛する人が去った時に何をしたかと言えば、ただひたすらに走るんですね。
とにかく走る。
目的地はなく、アメリカ大陸を何度も横断します。
当然、世間は「こいつは何をやっているんだろうか」と訝しがり、さらには何かの教祖のように崇めたりし始めるのです。
この辺りが非常に面白いし、走りたいから走るというフォレスト・ガンプの「動機」もよくよく考えれば理解できます。
結局、人はやりたい事をやりたいだけなんですね。
食べたければ食べるし、眠りたければ眠るし、走りたければ走るし、死にたければ死ぬんですよ。
フォレスト・ガンプにできる事はたったひとつ、走ることだった。
だから走りたくなって走った。
ただそれだけなんだな、と思いました。
それは寂しさや悲しみを忘れるためだったのかもしれないけれど、フォレスト・ガンプは難しいことは一切考えない。
3年以上も走り続け、ふと立ち止まる。
それがつまり、=人生ってヤツなのです。たぶん。
 

物語の裏側では実際のアメリカの歴史が流れます。
歴代の大統領と接見するフォレスト・ガンプ。
ジョン・レノンと一緒にテレビに出るフォレスト・ガンプ・・・
あの時代を走り抜けたアメリカ国民の方々には刺さる作品なのでしょうし、当時観た年齢では正直よく分からなったのが今回観てみて、胸をうつ余韻が残ったのも事実。
たまに思い出したかのように、「人生という道」を走ることに疲れた時に観ると感慨深く観賞できるかもしれません。

ただひたすら純粋に生きてきたフォレスト・ガンプが得たものとは何か。
それはきっと、観た人それぞれな気がします。
彼に自分を投影して観るほど、積み重ねてきたものが多ければ多いほどに得るものも大きく、多種多様になってゆく。
そんな気がしました。
舞う羽根のごとく、その先に続く人生もまたどうなってゆくのか分からない。
敷かれたレールなんて無い、そんな人生を走ってゆくしかない。
でも、だからこそ走る=生きる価値があるんだとメッセージを伝えているかもしれませんね。

ただ、羽根が変なところへ着地しないという保証は無いので、ちゃんと考えて走るべきだとは思いました(苦笑)


劇場、テレビ放送にて